■4月17日投開票の安中市長選は、大差で新人の岩井均候補が圧勝し、敗れた現職の茂木候補は4月22日に任期満了となるため、岩井・新市長の初登庁は来週4月25日月曜日と言うことになります。さて、加熱した1週間の選挙戦も終わり、4月18日には岩井氏に当選証書が渡され、市内もクールダウンしつつある最中に、4月19日の上毛新聞に次の記事が掲載されました。
**********上毛新聞2022年4月19日
富岡、安中市長選で公選法違反疑い 県警が3件警告
17日投開票された群馬県の富岡、安中の両市長選で、富岡、安中両署の選挙違反取締本部は18日までに、公選法違反の疑いがあるとして計3件の警告を出した。
県警捜査2課によると、内訳は安中が2件でいずれも事前運動関連、富岡は1件で文書関連だった。
**********
■今回の安中市長選の経緯をつぶさに見てきた当会は、選挙を間近に控えた3月下旬から4月上旬にかけて、複数の情報提供を受けていました。それは事前運動に関する情報でした。
今回、安中市長選で安中署の選挙違反取締本部が、2件、事前運動関連で警告を出したと報じられたことから、この警告内容について、非常に関心を呼び起こされました。
なぜなら、当会は群馬県選挙管理委員会に対して、住民から情報提供のあった事前運動と思しき事例2件について報告し、公職選挙法に抵触するのかどうか、打診した経緯があるからです。
その2件と言うのは、まず1件目は、茂木候補を支援する政治団体「市民ネットワーク」の広報カーが3月下旬から、市内各地で茂木候補の政策や実績を誇示する内容を連呼し始めていたからです。そして2件目は、それに触発されたかのように、岩井候補の名前を付けた「いわいひとしチャンネル」と題する動画サイトに、同じ党派だった自民党所属県議らの応援動動画がアップされ、その中で渦中の狩野浩志県議が岩井候補に投票を依頼するかのような表現を思わせる言葉を使っていたことでした。
そのため、群馬県選挙管理委員会を訪れ、これらの情報を提供した上で、公選法に定める事前運動に抵触するのかどうか、打診をしました。すると県選管の担当の千明祐介書記いわく「県選管では公選法に抵触するかどうかの判断はしません。判断を求めるのであれば県警や所轄署に相談してください」とのことでした。
今回、安中署の選挙違反取締本部と県警捜査2課により、安中市長選挙で公選法が定める事前運動禁止に触れる事前運動行為があったとして2件の警告が出されたことが判明したことから、当会では、群馬県選管が当会の情報提供をもとに県警に通報したのかどうか、確認する必要があると考えています。また、市長選を取り仕切る安中市選管も、この警察の発表について、どの程度事実関係を把握し、認識しているのか、確認しておく必要性を痛感しています。
なぜなら、県の選管も市の選管も、これまでの県内あるいは市内の数々の選挙において、当会が明らかに公選法違反を示す証拠を提示しても、「これは警察が判断するもので、選管では判断しない」と言われてきたため、今回の事前運動の警告が、候補者が行ったどのような事前運動の、どの行為が違反の疑いがあると判断し認定したのかをよく確認し、今後の選挙において、立候補者説明会などで、違法行為に抵触するか、しないかのボーダーラインを理解してもらう場合の、よい教材になるからです。
■公職選挙法(公選法)は、長い間に当事者でもある被選挙権を行使した議員らにより、自らの都合の良いように変えられてきた結果、きわめて曖昧な内容となっており、読み方によってはいかようにも捉えることができるシロモノです。さらに、運用面では、上記の通り、公選法の適切な運用を監視しなければならない選挙管理委員会が、まったくと言ってよいほど機能不全同然の現状となっており、警察や検察も、結局行政組織の一部のため、違法行為の判断や摘発に際しては、とりわけ権力側の政党関係者に対して及び腰となる傾向にあることは、読者の皆さんも感じておられるところだと思います。
そうした実情はありますが、やはり違反は違反。きちんと選管が指針を示し、警察に適切なアクションをとってもらうようにしないと、ますます、違反行為が伝播しエスカレートしてしまい、「あそこの選挙では、ここまでやっていたから、こちらの選挙もここまでは大丈夫だ」という勝手な理屈で、ルールがあって無きに等しい状態を招きかねないわけです。
■それでは今回、警察が行った2件の警告の対象となった事前運動について考えてみましょう。
調べてみると、選挙運動とは、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされています。そして、その適合要件としては、次の事項が挙げられます。
(1) 選挙が特定していること(必ずしも告示されていることは必要でない。) 。
(2) 特定の候補者(1人とは限らない。)の当選を図るためにするものであること。
(3) 選挙人(いわゆる有権者) に対して働きかける行為であること。
したがって、上記の3つの要素を含まない立候補の準備行為その他の政治活動、経済活動、社会的行為等は、選挙運動と区別されるものです。
しかしながら、これらの行為に名を借りて実態上選挙運動が行われる例も少なくありません。そこで、ある行為が選挙運動に当たるかどうかは、その行為の名目に着目するだけでなく、その行為の時期、場所、方法、内容等諸般の事情を具体的に考慮し、判断しなければなりません。
■今回の安中市長選挙でも、事前運動と思しき行為について群馬県選管に報告し判断をもとめたところ、「政治活動と選挙運動は違うので、政治団体が自ら支援する政治家の実績や政策を街宣なり、動画なりで有権者に呼びかけたとしても、政治活動の一環とみなせる場合に相当する。なお、個々の事案については、選管として判断しない」との回答でした。
しかし、前述のとおり、選挙運動は、特定の選挙につき特定の候補者を当選させることを目的とした行為であり、政治活動は、政党その他の政治団体がその政策の普及宣伝党勢拡張、政治啓発などを行うことであって、特定の候補者の当選を得るための行為ではありません。
また、選挙運動ができる期間は、立候補届が受理されたときから投票日前日の午後12時まで(なお、選挙カーによる連呼行為や街頭演説は午後8時まで)です。この開始時期より前の運動は事前運動として禁止されます。
■前述の通り、今回の安中市長選では、公示日の4月10日よりかなり早い時期から、気になる動きがありました。ひとつは、茂木候補を支援する政治団体「市民ネットワーク」が街宣車を仕立てて、早々と市内で連呼行為を行ったことと、もうひとつは、岩井候補を支援する関係者が動画サイト「いわいひとしチャンネル」を立ち上げ、その中で岩井候補の県議時代の同じ党派である狩野浩志県議の応援メッセージが流されたことです。いずれも疑問に感じた当会関係者から事務局に通報があったものです。
警察が警告を発した公選法違反疑いの行為が、上記の2件かどうかは定かではありませんが、可能性としては十分考えられます。そのため、選挙管理委員会が、選挙が行われる際に、候補者に手続きや留意点を説明する候補者説明会などの機会に、グレーゾーンの幅の大きい公職選挙法の解釈の具体的な事例として、活用することが望ましいはずです。
そのため、当会では安中市選管や群馬県選管に、きちんと警察と連絡をとりあい、今回警告が発せられた事例について、検証するように申し入れました。
*****4/20市選管への申入書*****ZIP ⇒ 20220420_annakasi_senkan_ate_mousiiresho.zip
令和4年4月20日
安中市選挙管理委員会あて
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢
要確認事項について
<報道記事>
**********上毛新聞2022年4月19日
富岡、安中市長選で公選法違反疑い 県警が3件警告
17日投開票された群馬県の富岡、安中の両市長選で、富岡、安中両署の選挙違反取締本部は18日までに、公選法違反の疑いがあるとして計3件の警告を出した。
県警捜査2課によると、内訳は安中が2件でいずれも事前運動関連、富岡は1件で文書関連だった。
●確認しておきたい事項
①この情報の内容を知っていたか?
②知っていた場合はどのような方法で知ったか?
③知らなかった場合は、警察に確認するのか?
④当会では県選管に、両候補の事前運動について情報提供をしたが、県選管からなにかそれに関連して連絡はあったか?
⑤連絡がなければ、これから県選管に対しても、本件情報について何らかの問い合わせや確認を行う予定があるか?あるいはすでにそれを行ったか?
⑥今回の公選法違反の疑い(安中市長選の場合は事前運動)について、市選管としての事実関係の確認や、違法性の程度の判断、および再発防止のための手立てを講ずることについて、どのように考えているのか?あるいはいないのか?
以上
**********
群馬県選挙管理委員会には、安中市長選の警告2件に加えて、富岡市長選で警察から警告が発せられた文書関連の事件についても調査検証を申し入れました。
*****4/22県選管への申入書*****ZIP ⇒ 20220422_gunmaken_senka_ate_mousiiresho.zip
令和4年4月22日
群馬県選挙管理委員会あて
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢
要確認事項について
<報道記事>
**********上毛新聞2022年4月19日
富岡、安中市長選で公選法違反疑い 県警が3件警告
17日投開票された群馬県の富岡、安中の両市長選で、富岡、安中両署の選挙違反取締本部は18日までに、公選法違反の疑いがあるとして計3件の警告を出した。
県警捜査2課によると、内訳は安中が2件でいずれも事前運動関連、富岡は1件で文書関連だった。
●確認しておきたい事項
①この記事に記載されている、安中市の2件、富岡市の1件の公選法違反疑い警告の内容について、把握しているのか?
②把握していなければ、これから警察に対して、何らかの問い合わせや確認を行う予定があるか?あるいはすでにそれを行ったか?
③今回の公選法違反の疑いについて、県選管としての事実関係の確認や、違法性の程度の判断、および再発防止のための手立てを講ずることについて、どのように考えているのか?あるいはいないのか?
④当会では本件選挙公示前に、貴選管に、両候補の事前運動について情報提供をしたが、貴選管からなにかそれに関連して警察等への連絡を行った経緯はあるのか?
以上
**********
■この結果、安中市選挙管理委員会事務局も群馬県選挙管理委員会も、上毛新聞の記事などから公選法違反疑いで警告が発せられたという情報は知っていましたが、いずれも警察に事実の確認などの行動はとっていないことが判りました。また、今後、警察に対して、今回の警告がどのような事前行為について違法の疑いがあると判断されたのかを確認するかどうかは、内部でよく検討したうえで判断するというスタンスでした。
いずれにしても、後日、文書で回答するように両選管事務局には強く要請しました。なぜなら、こうした公選法違反行為に対して黙認し続けるとますます違法行為がエスカレートしかねないためです。
すなわち、「以前A候補がこういう事前運動をやっていても何のお咎めもなかったから、今回B候補が同じことをやってもよいわけだ」と当然考えるでしょうし、さらには「ということは、もう少し踏み込んで大胆にやっても大丈夫だろう」などと、と次第に不法意識が薄れてしまい、収集がつかなくなってしまう事態の発生が、有権者として懸念されます。
■これまで選挙管理委員会は、公選法や関連する政治資金規正法などについて、違法行為の通報を受けても、極めて消極的な対応しかしませんでした。選管は、今回警察から発せられた公選法違反疑いの警告の内容をきちんと検証し、憲法で定められている選挙の基本原則である「普通選挙」(第15条第3項)、「平等選挙」(第14条第1項)、「秘密選挙」(第15条第4項)、「自由選挙」(第21条第1項)、「直接選挙」(第93条第2項)を担保できるように、今後の選挙のためにも、そうでなくても曖昧に扱われている公選法などのルールにおけるグレーゾーンをできる限りなくして、候補者間が平等に遵守できるよう、運用に努めなければなりません。
【市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考情報
**********東京新聞2022年4月19日 08時04分
安中市長に岩井さん 現職・茂木さん破り初当選
↑当選証書を受け取る岩井さん(右)↑
群馬県の安中、富岡市長選が十七日投開票され、元県議同士が対決した安中市は新人が現職に圧勝し、富岡市は現職が新人を下した。
安中市長選はともに無所属で、元県議の新人岩井均さん(58)=自民、公明推薦=が、三選を目指した現職の茂木英子さん(62)を破り、初当選を果たした。当日有権者数は四万七千九百五十九人、投票率は59・37%(前回49・59%)。
午後八時半過ぎ、岩井さんの事務所に当選の一報が入ると、集まった支持者から歓声と拍手が起こった。岩井さんは「最後までどうなるか分からなかったが、最高潮の中で今日を迎えることができたのが勝因」と振り返った。
選挙戦では、人口減少対策を最優先課題と位置付け、産業団地の整備や企業誘致、観光振興の強化や市役所新庁舎建設問題の精査などの公約を掲げた。「皆さんと約束した公約をしっかりと実現できるようにこれから始めたい。安中市が群馬県の中で光り輝く存在にしたい」と抱負を語った。
岩井さんは一夜明けた十八日、市役所で当選証書を受け取った。「市民が現状に対する不満、将来に対する不安を感じていた中で、掲げた公約が受け入れられた。負託に応えられるように頑張っていきたい」と抱負を述べた。
公約実現のため、市長や副市長、部長らでつくる「政策実現チーム」を立ち上げる構想も明かし、「ここを中心として政策を練りながら、優先順位をつけて進めていきたい」と語った。(安永陽祐)
**********東京新聞2022年4月19日 08時03分
安中市長選 茂木さん3選ならず「心よりおわび」
↑支持者に謝意を伝える茂木さん=安中市で↑
茂木英子さんの事務所では、午後八時半過ぎ、落選の結果が伝わると、集まった支持者たちから「あっー」と落胆の声が上がり、重い空気に包まれた。
茂木さんは支持者らの拍手に迎えられて登壇し、「結果が出せず申し訳ない。心よりおわびします」と敗戦の弁を述べた。
「心一つにクリーンな草の根選挙を展開することができ、私にとって誇り」と振り返り、「これまでの取り組みは決して無駄ではない。皆さん、これからもつながっていきましょう」と呼び掛けた。(樋口聡)
**********
**********上毛新聞2022年4月19日
富岡、安中市長選で公選法違反疑い 県警が3件警告
17日投開票された群馬県の富岡、安中の両市長選で、富岡、安中両署の選挙違反取締本部は18日までに、公選法違反の疑いがあるとして計3件の警告を出した。
県警捜査2課によると、内訳は安中が2件でいずれも事前運動関連、富岡は1件で文書関連だった。
**********
■今回の安中市長選の経緯をつぶさに見てきた当会は、選挙を間近に控えた3月下旬から4月上旬にかけて、複数の情報提供を受けていました。それは事前運動に関する情報でした。
今回、安中市長選で安中署の選挙違反取締本部が、2件、事前運動関連で警告を出したと報じられたことから、この警告内容について、非常に関心を呼び起こされました。
なぜなら、当会は群馬県選挙管理委員会に対して、住民から情報提供のあった事前運動と思しき事例2件について報告し、公職選挙法に抵触するのかどうか、打診した経緯があるからです。
その2件と言うのは、まず1件目は、茂木候補を支援する政治団体「市民ネットワーク」の広報カーが3月下旬から、市内各地で茂木候補の政策や実績を誇示する内容を連呼し始めていたからです。そして2件目は、それに触発されたかのように、岩井候補の名前を付けた「いわいひとしチャンネル」と題する動画サイトに、同じ党派だった自民党所属県議らの応援動動画がアップされ、その中で渦中の狩野浩志県議が岩井候補に投票を依頼するかのような表現を思わせる言葉を使っていたことでした。
そのため、群馬県選挙管理委員会を訪れ、これらの情報を提供した上で、公選法に定める事前運動に抵触するのかどうか、打診をしました。すると県選管の担当の千明祐介書記いわく「県選管では公選法に抵触するかどうかの判断はしません。判断を求めるのであれば県警や所轄署に相談してください」とのことでした。
今回、安中署の選挙違反取締本部と県警捜査2課により、安中市長選挙で公選法が定める事前運動禁止に触れる事前運動行為があったとして2件の警告が出されたことが判明したことから、当会では、群馬県選管が当会の情報提供をもとに県警に通報したのかどうか、確認する必要があると考えています。また、市長選を取り仕切る安中市選管も、この警察の発表について、どの程度事実関係を把握し、認識しているのか、確認しておく必要性を痛感しています。
なぜなら、県の選管も市の選管も、これまでの県内あるいは市内の数々の選挙において、当会が明らかに公選法違反を示す証拠を提示しても、「これは警察が判断するもので、選管では判断しない」と言われてきたため、今回の事前運動の警告が、候補者が行ったどのような事前運動の、どの行為が違反の疑いがあると判断し認定したのかをよく確認し、今後の選挙において、立候補者説明会などで、違法行為に抵触するか、しないかのボーダーラインを理解してもらう場合の、よい教材になるからです。
■公職選挙法(公選法)は、長い間に当事者でもある被選挙権を行使した議員らにより、自らの都合の良いように変えられてきた結果、きわめて曖昧な内容となっており、読み方によってはいかようにも捉えることができるシロモノです。さらに、運用面では、上記の通り、公選法の適切な運用を監視しなければならない選挙管理委員会が、まったくと言ってよいほど機能不全同然の現状となっており、警察や検察も、結局行政組織の一部のため、違法行為の判断や摘発に際しては、とりわけ権力側の政党関係者に対して及び腰となる傾向にあることは、読者の皆さんも感じておられるところだと思います。
そうした実情はありますが、やはり違反は違反。きちんと選管が指針を示し、警察に適切なアクションをとってもらうようにしないと、ますます、違反行為が伝播しエスカレートしてしまい、「あそこの選挙では、ここまでやっていたから、こちらの選挙もここまでは大丈夫だ」という勝手な理屈で、ルールがあって無きに等しい状態を招きかねないわけです。
■それでは今回、警察が行った2件の警告の対象となった事前運動について考えてみましょう。
調べてみると、選挙運動とは、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされています。そして、その適合要件としては、次の事項が挙げられます。
(1) 選挙が特定していること(必ずしも告示されていることは必要でない。) 。
(2) 特定の候補者(1人とは限らない。)の当選を図るためにするものであること。
(3) 選挙人(いわゆる有権者) に対して働きかける行為であること。
したがって、上記の3つの要素を含まない立候補の準備行為その他の政治活動、経済活動、社会的行為等は、選挙運動と区別されるものです。
しかしながら、これらの行為に名を借りて実態上選挙運動が行われる例も少なくありません。そこで、ある行為が選挙運動に当たるかどうかは、その行為の名目に着目するだけでなく、その行為の時期、場所、方法、内容等諸般の事情を具体的に考慮し、判断しなければなりません。
■今回の安中市長選挙でも、事前運動と思しき行為について群馬県選管に報告し判断をもとめたところ、「政治活動と選挙運動は違うので、政治団体が自ら支援する政治家の実績や政策を街宣なり、動画なりで有権者に呼びかけたとしても、政治活動の一環とみなせる場合に相当する。なお、個々の事案については、選管として判断しない」との回答でした。
しかし、前述のとおり、選挙運動は、特定の選挙につき特定の候補者を当選させることを目的とした行為であり、政治活動は、政党その他の政治団体がその政策の普及宣伝党勢拡張、政治啓発などを行うことであって、特定の候補者の当選を得るための行為ではありません。
また、選挙運動ができる期間は、立候補届が受理されたときから投票日前日の午後12時まで(なお、選挙カーによる連呼行為や街頭演説は午後8時まで)です。この開始時期より前の運動は事前運動として禁止されます。
■前述の通り、今回の安中市長選では、公示日の4月10日よりかなり早い時期から、気になる動きがありました。ひとつは、茂木候補を支援する政治団体「市民ネットワーク」が街宣車を仕立てて、早々と市内で連呼行為を行ったことと、もうひとつは、岩井候補を支援する関係者が動画サイト「いわいひとしチャンネル」を立ち上げ、その中で岩井候補の県議時代の同じ党派である狩野浩志県議の応援メッセージが流されたことです。いずれも疑問に感じた当会関係者から事務局に通報があったものです。
警察が警告を発した公選法違反疑いの行為が、上記の2件かどうかは定かではありませんが、可能性としては十分考えられます。そのため、選挙管理委員会が、選挙が行われる際に、候補者に手続きや留意点を説明する候補者説明会などの機会に、グレーゾーンの幅の大きい公職選挙法の解釈の具体的な事例として、活用することが望ましいはずです。
そのため、当会では安中市選管や群馬県選管に、きちんと警察と連絡をとりあい、今回警告が発せられた事例について、検証するように申し入れました。
*****4/20市選管への申入書*****ZIP ⇒ 20220420_annakasi_senkan_ate_mousiiresho.zip
令和4年4月20日
安中市選挙管理委員会あて
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢
要確認事項について
<報道記事>
**********上毛新聞2022年4月19日
富岡、安中市長選で公選法違反疑い 県警が3件警告
17日投開票された群馬県の富岡、安中の両市長選で、富岡、安中両署の選挙違反取締本部は18日までに、公選法違反の疑いがあるとして計3件の警告を出した。
県警捜査2課によると、内訳は安中が2件でいずれも事前運動関連、富岡は1件で文書関連だった。
●確認しておきたい事項
①この情報の内容を知っていたか?
②知っていた場合はどのような方法で知ったか?
③知らなかった場合は、警察に確認するのか?
④当会では県選管に、両候補の事前運動について情報提供をしたが、県選管からなにかそれに関連して連絡はあったか?
⑤連絡がなければ、これから県選管に対しても、本件情報について何らかの問い合わせや確認を行う予定があるか?あるいはすでにそれを行ったか?
⑥今回の公選法違反の疑い(安中市長選の場合は事前運動)について、市選管としての事実関係の確認や、違法性の程度の判断、および再発防止のための手立てを講ずることについて、どのように考えているのか?あるいはいないのか?
以上
**********
群馬県選挙管理委員会には、安中市長選の警告2件に加えて、富岡市長選で警察から警告が発せられた文書関連の事件についても調査検証を申し入れました。
*****4/22県選管への申入書*****ZIP ⇒ 20220422_gunmaken_senka_ate_mousiiresho.zip
令和4年4月22日
群馬県選挙管理委員会あて
市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢
要確認事項について
<報道記事>
**********上毛新聞2022年4月19日
富岡、安中市長選で公選法違反疑い 県警が3件警告
17日投開票された群馬県の富岡、安中の両市長選で、富岡、安中両署の選挙違反取締本部は18日までに、公選法違反の疑いがあるとして計3件の警告を出した。
県警捜査2課によると、内訳は安中が2件でいずれも事前運動関連、富岡は1件で文書関連だった。
●確認しておきたい事項
①この記事に記載されている、安中市の2件、富岡市の1件の公選法違反疑い警告の内容について、把握しているのか?
②把握していなければ、これから警察に対して、何らかの問い合わせや確認を行う予定があるか?あるいはすでにそれを行ったか?
③今回の公選法違反の疑いについて、県選管としての事実関係の確認や、違法性の程度の判断、および再発防止のための手立てを講ずることについて、どのように考えているのか?あるいはいないのか?
④当会では本件選挙公示前に、貴選管に、両候補の事前運動について情報提供をしたが、貴選管からなにかそれに関連して警察等への連絡を行った経緯はあるのか?
以上
**********
■この結果、安中市選挙管理委員会事務局も群馬県選挙管理委員会も、上毛新聞の記事などから公選法違反疑いで警告が発せられたという情報は知っていましたが、いずれも警察に事実の確認などの行動はとっていないことが判りました。また、今後、警察に対して、今回の警告がどのような事前行為について違法の疑いがあると判断されたのかを確認するかどうかは、内部でよく検討したうえで判断するというスタンスでした。
いずれにしても、後日、文書で回答するように両選管事務局には強く要請しました。なぜなら、こうした公選法違反行為に対して黙認し続けるとますます違法行為がエスカレートしかねないためです。
すなわち、「以前A候補がこういう事前運動をやっていても何のお咎めもなかったから、今回B候補が同じことをやってもよいわけだ」と当然考えるでしょうし、さらには「ということは、もう少し踏み込んで大胆にやっても大丈夫だろう」などと、と次第に不法意識が薄れてしまい、収集がつかなくなってしまう事態の発生が、有権者として懸念されます。
■これまで選挙管理委員会は、公選法や関連する政治資金規正法などについて、違法行為の通報を受けても、極めて消極的な対応しかしませんでした。選管は、今回警察から発せられた公選法違反疑いの警告の内容をきちんと検証し、憲法で定められている選挙の基本原則である「普通選挙」(第15条第3項)、「平等選挙」(第14条第1項)、「秘密選挙」(第15条第4項)、「自由選挙」(第21条第1項)、「直接選挙」(第93条第2項)を担保できるように、今後の選挙のためにも、そうでなくても曖昧に扱われている公選法などのルールにおけるグレーゾーンをできる限りなくして、候補者間が平等に遵守できるよう、運用に努めなければなりません。
【市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考情報
**********東京新聞2022年4月19日 08時04分
安中市長に岩井さん 現職・茂木さん破り初当選
↑当選証書を受け取る岩井さん(右)↑
群馬県の安中、富岡市長選が十七日投開票され、元県議同士が対決した安中市は新人が現職に圧勝し、富岡市は現職が新人を下した。
安中市長選はともに無所属で、元県議の新人岩井均さん(58)=自民、公明推薦=が、三選を目指した現職の茂木英子さん(62)を破り、初当選を果たした。当日有権者数は四万七千九百五十九人、投票率は59・37%(前回49・59%)。
午後八時半過ぎ、岩井さんの事務所に当選の一報が入ると、集まった支持者から歓声と拍手が起こった。岩井さんは「最後までどうなるか分からなかったが、最高潮の中で今日を迎えることができたのが勝因」と振り返った。
選挙戦では、人口減少対策を最優先課題と位置付け、産業団地の整備や企業誘致、観光振興の強化や市役所新庁舎建設問題の精査などの公約を掲げた。「皆さんと約束した公約をしっかりと実現できるようにこれから始めたい。安中市が群馬県の中で光り輝く存在にしたい」と抱負を語った。
岩井さんは一夜明けた十八日、市役所で当選証書を受け取った。「市民が現状に対する不満、将来に対する不安を感じていた中で、掲げた公約が受け入れられた。負託に応えられるように頑張っていきたい」と抱負を述べた。
公約実現のため、市長や副市長、部長らでつくる「政策実現チーム」を立ち上げる構想も明かし、「ここを中心として政策を練りながら、優先順位をつけて進めていきたい」と語った。(安永陽祐)
**********東京新聞2022年4月19日 08時03分
安中市長選 茂木さん3選ならず「心よりおわび」
↑支持者に謝意を伝える茂木さん=安中市で↑
茂木英子さんの事務所では、午後八時半過ぎ、落選の結果が伝わると、集まった支持者たちから「あっー」と落胆の声が上がり、重い空気に包まれた。
茂木さんは支持者らの拍手に迎えられて登壇し、「結果が出せず申し訳ない。心よりおわびします」と敗戦の弁を述べた。
「心一つにクリーンな草の根選挙を展開することができ、私にとって誇り」と振り返り、「これまでの取り組みは決して無駄ではない。皆さん、これからもつながっていきましょう」と呼び掛けた。(樋口聡)
**********
コメントをお寄せくださりありがとうございます。
選挙が終わると、警察は選挙期間とその前後で公選法に基づく違反行為があった場合、このような形で事後報告をします。公職選挙法は、当事者が議員らであり、その議員らが法改正の権限を持っているため、長年の間に骨抜きになっていて、実態としては「やったもん勝ち」の様相を呈しています。
群馬県で選挙違反がとりわけ頻繁に取りざたされる背景には、日本でも有数の保守王国で、選挙管理委員会は長年にわたり選挙違反に対して寛容な対応をしてきており、そのため、選挙におけるルール違反に鈍感になってしまい、仮に選挙違反と認定されても、せいぜい警告止まりになり、起訴されるケースは極めて希です。
事務局より
以前、栃木県知事選挙でも同じ様な公文書違反により、関係者の公民権が停止させられてしまった事案があるそうですね。