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妊娠性鼻炎、病因の一端を解明か

2023年02月20日 23時31分51秒 | 健康の保持増進

妊娠性鼻炎、病因の一端を解明か

大阪医科薬科大学病院・菊岡祐介

 

対象の論文

原文 Role of VPAC1 and VPAC2 receptors in the etiology of pregnancy rhinitis: an experimental study in rats

この論文に着目した理由

 妊娠に関連してアレルギー性鼻炎様の症状を来すことはよく知られており、「妊娠性鼻炎」と呼ばれる。症状では特に鼻閉を来しやすいため、睡眠の質の低下などにより精神的ストレスの増加に悩まされることもある。このほか、妊娠中には投薬の制限も多いことも精神的ストレスの増加につながると考えられている。しかし、多くは出産を経ると、症状が改善するとされる。

 妊娠に関連する鼻炎症状の病態は、いまだ不明確な部分も多い。この論文は、そのメカニズムを理解するのに役立つと思われたことから、着目した。

私の見解

 血管作動性腸管ペプチド(VIP)の受容体、VPAC-1やVPAC-2は、アレルギー性鼻炎患者の鼻腔内で増加することが知られている。

 この論文では、ラットを妊娠群と対照群の2群に分けて鼻粘膜組織を観察したところ、妊娠群ではVPAC-1およびVPAC-2の発現が有意に増加していることが示された。このことから、妊娠により、アレルギー性鼻炎で証明されている2つの受容体の発現増加と同様の反応が引き起こされていることが明らかになった。

 論文でも述べられているように、この実験結果は、妊娠性鼻炎は、妊娠前から存在する不顕性アレルギーの活性化により引き起こされるという仮説を裏付けるものである。

日常臨床への生かし方

 妊娠期間中の薬剤使用には制限があり、妊娠性鼻炎の症状を緩和することは、この研究をもってしても容易なことではない。しかし、妊娠に付随する症状として鼻炎のメカニズムを理解し、説明できるようになれば、患者の精神的ストレスの軽減に役立てられるのではないかと期待される。

 

菊岡 祐介(きくおか・ゆうすけ)

大阪医科薬科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科助教。2015年、川崎医科大学医学部卒。大阪医科大学附属病院にて初期研修。その後、同院耳鼻咽喉科・頭頸部外科レジデント、市立ひらかた病院での勤務を経て、2020年より現職。2021年より大阪医科薬科大学病院アレルギーセンター兼任。専門は鼻副鼻腔疾患およびアレルギー。スポーツ医学(特にサッカー)や旅行医学に関しても研鑽を積んでいる。

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済生会富山病院、健康診断特化の新施設 2024年夏完成

2023年02月14日 22時15分20秒 | 健康の保持増進

済生会富山病院、健康診断特化の新施設 2024年夏完成

 2023年2月14日 (火)配信北日本新聞
 
 
 済生会富山病院(堀江幸男院長)は、健康診断に特化した新施設を2024年夏までに建設する。13日に同病院で開かれた富山交通との健康増進に関する連携協定調印式の中で明らかにした。職員数も増やして受け入れ体制を拡充し、地域の健康づくりの拠点にする。

 施設は4階建てで、3月に着工、24年9月から運用を始める予定。同病院では年間約6千人が健康診断を受けているが、新施設の完成後は、受け入れ人数を倍近くに増やせるという。

 富山交通との協定では、社員の脳ドック受診費用の優遇や生活習慣病予防の啓発、生活困窮者や妊婦の通院時の送迎協力などを進める。健康増進に関する同病院と企業の連携協定は初めて。

 調印式で亀山智樹副院長は「より一層、地域の疾病予防を推進したい」と述べ、土田英喜社長は「安全輸送のために乗務員の健康増進に取り組んでいく」とあいさつした。

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「酒は百薬の長」ならず? カナダで新指針、節制促す

2023年02月10日 19時06分10秒 | 健康の保持増進

「酒は百薬の長」ならず? カナダで新指針、節制促す

2023年2月10日 15:37

 【ワシントン共同】健康に安全な飲酒量はない―。カナダの非政府組織、薬物使用・依存症センターが1月、アルコールと健康に関する新たな指針を公表した。健康悪化を回避できる可能性の範囲は、一般的な350ミリリットルの缶ビールなら週2本飲むだけで超えてしまうなど厳しい内容だ。消費者に節酒を考えてもらう狙いがある。

 指針の改定は12年ぶり。飲酒の基本単位「1杯」を5度のビールなら341ミリリットル、12度のワインは142ミリリットル、40度のウオッカは43ミリリットルと設定。いずれも純アルコール13・45グラムが含まれる分量に相当する。

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花粉飛散、2月上旬から 西日本、東海、関東で多く

2023年01月19日 21時42分43秒 | 健康の保持増進

花粉飛散、2月上旬から 西日本、東海、関東で多く

 2023年1月19日 (木)配信共同通信社
 

 民間気象会社ウェザーニューズ(千葉市)は18日、今シーズンの花粉の飛散予想を発表した。2月上旬から関東や九州、近畿、東海の一部でスギ花粉が飛び始め、各地に広がっていく見通し。飛散量は西日本や東海、関東で2022年より多く、北陸や北日本では少ないという。

 同社によると、日本列島は1月下旬に厳しく冷え込んだ後、2月には平年並みの気温となる見込みで、スギの雄花が目覚める「休眠打破」が進む。スギ花粉の飛散は2月下旬、ヒノキ花粉は3月下旬からピークを迎える。

 各地の飛散量は、中国・四国で平年比151%、九州で同132%、関東・山梨と近畿でいずれも同122%など。全国平均は同116%としている。

 同社は「飛散量が多くなるエリアでは、花粉症の症状が重くなる恐れがあり、万全な対策を取ってほしい」としている。

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若者むしばむ市販薬 依存症、命の危険も 広がるオーバードーズ問題

2023年01月11日 22時25分42秒 | 健康の保持増進

若者むしばむ市販薬 依存症、命の危険も 広がるオーバードーズ問題

 2023年1月10日 (火)配信共同通信社
 

 精神的苦痛から逃れようと、市販薬を大量摂取する若者が増えている。「オーバードーズ(OD)」と呼ばれ、ふわふわとした感覚を得られる一方、覚醒剤や大麻といった違法薬物と同じように依存症に陥るケースも。専門家は「内臓に強い負担がかかり、死の危険性もある」と警鐘を鳴らし、背景にあるメンタルヘルスの不調にこそ目を向けるべきだと訴える。

 愛知県の男性(22)は、学校生活のストレスからODを始めた。幼い頃から学校になじめず、中学でうつ病を発症。高校は校則が厳しく、「髪が長い」と何度も叱責(しっせき)された。「抑圧されている」とふさぎ込み、ストレスで声が出なくなった。

 居場所を求めるように繁華街のたまり場へ。似た境遇の仲間と一緒に市販の風邪薬を20錠ほど飲むと、平衡感覚を失った。頭がふわふわとし、息苦しさから少しだけ解放された。

 ODを繰り返したのは「体に悪いことをしている」という感覚を得たかったから。せき止めや睡眠導入剤なども手当たり次第に飲んだ。

 数カ月前、親しい知人が亡くなり「思い出を曖昧にせず、しっかり残しておきたい」とODをやめた。ただ、生きづらさは解消されず、今も残ったままだ。

 ODのまん延はデータにも表れている。

 国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)によると、薬物依存症の治療を受ける10代のうち、市販薬が原因の割合は2014年のゼロから20年は6割近くにまで増加。首都圏にある三つの救急センターの集計では、薬物の過剰摂取による搬送のうち市販薬の摂取で運ばれた事例は、18年は32件だったが、20年は2倍以上の75件だった。

 国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦(まつもと・としひこ)・薬物依存研究部長は、10代のOD患者の多くは非行歴がない一方で、メンタルヘルスの問題を抱えているケースが多いと指摘。家庭や学校で抱える精神的苦痛を緩和するため、市販薬に「鎮静剤」の役割を求める若者が多くを占めると説明し、「薬を無理やりやめさせれば逃げ場を失ってしまう。医師や周囲の人が信頼できる話し相手になり、薬以外の選択肢を持ってもらうことが必要だ」と強調する。

 埼玉医大病院臨床中毒センター(埼玉県毛呂山町)の上條吉人(かみじょう・よしと)センター長によると、市販薬の中には依存性のある成分が含まれるものもあるため「繰り返し摂取すれば薬物依存に陥る危険がある」と警告。製薬会社は依存性のある成分を規制すべきだとし、ドラッグストアなどでの大量購入を防ぐ対策も重要だと話した。

 ※オーバードーズ

 薬剤などの過剰摂取を意味する「overdose」。「dose(ドーズ)」は、薬を服用する際の1回あたりの用量を指す。若者による市販薬の大量摂取は、違法ではないものの、依存症に陥ったり内臓を悪くしたりする例が増えていることから、社会問題になっている。

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寝起き直後のパフォーマンスは60%程度 しばらく頭がボーッとしてしまう理由は…

2022年11月29日 00時08分12秒 | 健康の保持増進
寝起き直後のパフォーマンスは60%程度 しばらく頭がボーッとしてしまう理由は…

 こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に科学的見地からビシバシお答えします。「しっかり眠ったはずなのに目覚め感が悪い」「昼寝しても頭がボンヤリ」など、誰しも寝起きの悪さに悩まされた経験をお持ちでしょう。今回はそんなボンヤリ感の原因である「睡眠慣性」のお話です。
 皆さんの日々の目覚め感はいかがでしょうか。「良い」「悪い」「日によって違う」など様々でしょうが、普段寝起きの良い人でも「しっかり眠ったはずなのに起きたら頭が重苦しい」「しっかり目が覚めるまで時間がかかった」ことがあるのではないでしょうか。また、眠気解消のつもりで昼寝をしたのに、「目覚めた後にかえって 気怠けだる さとボンヤリ感が強くなって逆効果だった」などの経験をした方もおられるでしょう。
 このように、目覚めた後に眠気や 倦怠けんたい 感が強く残る現象を睡眠慣性と呼びます。睡眠慣性があると、その後の行動の能率が低下し、状況判断は遅く、複雑な思考がしにくくなります。健康な成人を対象に、起床直後の脳のパフォーマンス(認知機能)を調べた研究によれば、一日の中で起床直後が最も悪く、その人の最大パフォーマンス(この時刻は人によって異なる)の60%程度であったといいます。しかも睡眠慣性はすぐには回復せず、起床後1時間たっても、まだ80%台までしか戻っていなかったそうです。
 このように、普段の私たちの生活においても大なり小なり睡眠慣性は生じていて、起床直後に自分のフルパワーを発揮することは難しいのです。特に通勤で車の運転をしなくてはならない人、危険作業に従事しなくてはならない人はアクシデントが生じるリスクを念頭に置く必要があります。学生の皆さんも、大事な試験などがある日には夜更かしせず、早起きして頭をしっかりと覚醒させてから臨みましょう。
寝起き直後のパフォーマンスは60%程度 しばらく頭がボーッとしてしまう理由は…
周波数の遅い脳波が混ざり込む

 では、なぜ起床後に睡眠慣性が生じるのでしょうか? 日中しっかりと目覚めている時の脳波を測定すると、α(アルファ)波やβ(ベータ)波と呼ばれる周波数が速いものが主体で、私たちは物事をしっかりと把握したり的確に行動したりできます。ところが覚醒直後には、睡眠中に見られるような周波数の遅い脳波が混ざり込み、脳の覚醒度が低い状態が続くことがあり、これが睡眠慣性の原因です。
 睡眠は、浅いノンレム睡眠、深いノンレム睡眠、レム睡眠の3種類に分けられますが、深いノンレム睡眠時にはθ(シータ)波やδ(デルタ)波など周波数の遅い脳波が大部分を占めます。特に深いノンレム睡眠から目覚めた直後には、この周波数の遅い脳波が覚醒後も残存し、一般的に睡眠慣性が生じやすくなります。深いノンレム睡眠は寝ついてから2、3時間以内に集中します。例えば、当直業務中に仮眠を取っていて、緊急呼び出しで起こされた際などは、睡眠慣性が生じることがあります。
能率アップのための昼寝は…
 睡眠慣性は昼寝でもみられます。昼寝が長すぎると深いノンレム睡眠に入ってしまうためです。眠気を解消して能率を上げるためのはずが、かえってボーッとして仕事にならないのでは本末転倒です。昼寝中に深いノンレム睡眠が出現するまでの時間は、年齢や昼寝の姿勢、睡眠不足の度合いなどで個人差がありますが、30分以上になると深いノンレム睡眠に至る可能性が高まります。特に若い人は入眠してから深いノンレム睡眠に至るまでの時間が短いので要注意です。30分以内のコンパクトな昼寝がお勧めなのには睡眠慣性を防ぐ意味もあるのです。(三島和夫 精神科医)

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酒の「ほどほど」厚労省が指針作りへ 性別や年齢に応じ…アルコール性肝疾患で死亡 96年の2・5倍

2022年11月11日 18時29分24秒 | 健康の保持増進
酒の「ほどほど」厚労省が指針作りへ 性別や年齢に応じ…アルコール性肝疾患で死亡 96年の2・5倍
 2022年11月10日 (木)配信読売新聞

 2021年に過度の飲酒によるアルコール性肝疾患で死亡した人は6016人で、1996年の2・5倍に増えたことが厚生労働省の調査でわかった。コロナ禍で酒量が増えた人もおり、健康リスクは高まっている。厚労省は、過度な飲酒を防ぐため、性別や年齢、体質に応じた飲酒ガイドライン(指針)作りに乗り出した。(都梅真梨子)
コロナ禍で孤独感
 「嫌なことを忘れるため毎日、酒に頼っていた」。6日早朝、アルコール依存症の患者らのオンライン交流会「回復の架け橋」で、中国地方に住む50歳代の会社員女性はこう打ち明けた。
 女性は、子どもの進学で悩み、台所で飲酒を繰り返す「キッチンドリンカー」になった。コロナ禍でリモート勤務になると、酒量の歯止めが利かなくなり、入退院を3回繰り返した。ただ、今年初めに交流会に参加して以降は、断酒を続けられているという。女性は「こうして誰かに悩みを聞いてもらうことが何より重要なのです」と語った。
 主宰する東京都大田区の団体職員山本年哉(としや)さん(62)は「コロナ禍で行動制限やテレワークが続き、人の目が届かず、孤独感から酒量が増える人が多かった」と話す。
女性の増加
 国内の酒類の消費量は右肩下がりだ。国税庁によると、2020年度の成人1人あたりの消費量は年間75リットルで、ピークだった1992年度と比べて3割弱減少した。高齢化や若者の「酒離れ」が背景にあるとみられる。
 一方で、アルコール性肝疾患で死亡する人は増加傾向にある。厚労省の調査では、96年の死者は2403人だったのに対し、2019年は5480人、コロナ禍の21年は6016人に増加した。男女別では男性5215人、女性801人で、男性の6割強が60歳以上だった。
 厚労省によると、アルコール性の肝硬変は、一度症状が出ると肝移植以外に効果的な治療法がなく、過剰な飲酒習慣のある高齢の依存患者が特に重篤になりやすいとされる。様々な疾患の治療法が進歩する中、最終的にアルコール性肝硬変で亡くなるケースが目立つという。
 過度の飲酒をする女性が増えているのも懸念材料だ。健康リスクが高まるアルコール量の飲酒習慣がある女性の割合は、10年の7・5%から19年は9・1%に上昇。特に50歳代女性の割合は16・8%と高かった。働く女性が増えているほか、酒類メーカーや飲食店が女性向けの商品開発と集客に力を入れていることが背景にあるとみられる。
有識者検討会
 政府は12年、健康リスクが高まるアルコール摂取量を男性は1日あたり40グラム(ビール500ミリ・リットル缶2本分)以上、女性20グラム以上と規定した。ただ、アルコールの処理能力は年齢や性別、体質、筋肉量などによって異なる。
 アルコール依存症に詳しい昭和大付属烏山病院(東京都世田谷区)の常岡俊昭医師は「女性は男性に比べてアルコールの分解能力が低く、男性と同じ飲み方をすると肝障害を起こしやすい。女性の社会進出や『家飲み』の浸透など社会の変化に対応した予防策が必要だ」と指摘する。
 欧米など多くの国では、それぞれの体質や文化などを踏まえて健康を害さない飲み方を具体的に示した指針を作っている。このため厚労省は、国内でもきめ細かい酒量の目安やリスクを盛り込んだ指針を作成する必要があると判断し、10月に有識者検討会を設置した。
 検討会では、委員から「飲酒ですぐに顔が赤くなる人はアルコール分解能力が低く、注意喚起が必要」「一気飲みなど日本の古い慣習についても警鐘を鳴らすべきだ」などの意見が上がった。厚労省は今後、依存患者の支援団体や酒類メーカーなどの関係者からもヒアリングを行い、来年3月をめどに指針を作成する方針だ。

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中央病院の出前講座好評 市民の健康志向に応える 出雲 34テーマで専門医ら派遣

2022年11月11日 12時52分14秒 | 健康の保持増進
中央病院の出前講座好評 市民の健康志向に応える 出雲 34テーマで専門医ら派遣
 2022年11月10日 (木)配信山陰中央新報

 医師や看護師を、市民の生涯学習の講師として派遣する島根県立中央病院(出雲市姫原4丁目)の出前講座が好評だ。新型コロナウイルスの感染収束が見通せない中で高まる健康への関心に、認知症予防、脳卒中予防、骨折しない体づくりなど幅広いテーマ設定で応えている。 (松本直也)
 今月2日、出雲市役所であった市生涯学習講座のテーマは加齢で心身の活力が低下する「フレイル」だった。総合診療科の今田敏宏部長が、集まった51人を前に予防の鍵は食事、運動、社会参加と説明。理学療法士の祝部俊成広報室長補佐が脚の筋力を鍛える運動を教えた。
 運動の効果がみられるウオーキングの歩数など、質疑応答も活発。同市塩冶町の中島恵子さん(78)は「かかりつけ医に普段詳しく聞けないが、ここでは専門の先生から情報が得られる」と話した。
 出前講座は2020年11月、市民の予防医学の知識を深め、治療の現状も知ってもらう機会として始まった。市内を中心に、1回10人以上が集まれば、医師、看護師らを派遣。21年度は12回、本年度は実施済みの9回を含め、前年度を上回る19回の申し込みがある。
 全36診療科のうち23診療科から幅広く派遣。当初多かったコロナについて知りたいという要望に応える感染症予防のほか、「杖(つえ)は折っても骨折るな」と題した骨折予防、女性のヘルスケアなど、合わせて34のテーマを用意している。
 2年前から利用する四絡コミュニティセンターの健康福祉部長、岡信博さん(77)は「多くの人が健康寿命を長くしたいと思っている。健康づくりのための選択肢がたくさんある」と魅力を語る。
 参加者アンケートで生活習慣病予防、体力の向上策などの要望も寄せられ、祝部室長補佐は「地域が知りたい内容に充実させ、実施地域も広げていきたい」と話している。
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原因分からない高熱続く「不明熱」、心身つらく...いったい何が? 診断の流れや検査、問題点 専門家に聞く

2022年11月06日 22時49分59秒 | 健康の保持増進
原因分からない高熱続く「不明熱」、心身つらく...いったい何が? 診断の流れや検査、問題点 専門家に聞く
 2022年11月4日 (金)配信新潟日報

 原因が分からない高熱が長期間続く「不明熱」。医療関係者以外にはあまりなじみがないが、国の基礎統計である「患者調査」でも使われる病名だ。診察や検査でもなかなか診断がつかないと、患者は自分の体に何が起きているのか―分からないままのつらい状態に置かれ、体力が落ちれば一層不安が募る。どう受け止めたらいいのか。専門家に聞いた。
▽患者は年7千人
 不明熱の定義は時代によって変わってきたが、現在は「38度以上の発熱が繰り返し認められる」「その状態が3週間以上続く」「病歴の聞き取り、血液検査など必須の問診、検査をしても診断がつかない」こととされる。
 厚生労働省の「患者調査」によると、2017年の不明熱の患者は7千人。定義を満たさないうちに原因が判明したり、熱が下がったりするケースも多い。
 不明熱の疫学や診断に詳しい国立国際医療研究センター放射線核医学科の南本亮吾診療科長によると、近年は感染症や悪性腫瘍の検査が進歩して原因が判明するケースが増え、原因の内訳では膠原(こうげん)病や血管炎、リウマチなどの炎症性疾患の割合が高まっているという。
 患者を半年から1年追跡したこれまでの研究によると、以前の死亡率は7~33%だったが、00年以降は7%程度で落ち着いている。不思議なことに、最後まで原因が分からないケースは一貫して2割程度はあるものの、そのほとんどは結果的に熱が下がる。
▽繰り返しの問診、検査で消耗
 診断を確定させる手順はほぼ定まっている。体の診察、本人や場合によっては家族の病歴の聞き取り、ふだん飲んでいる薬のチェック、血液や尿の各種検査、細菌がいないかどうかの培養検査、結核や肺炎が隠れていないか調べる胸部エックス線、腹部の超音波検査、CT検査...。疑わしい病気の有無を順に確かめ、絞り込んでいく。
 「なかなか診断がつかない場合は、検査や聞き取りで新たな情報を得て、それを基に考えることの繰り返し」(南本さん)になる。発熱の原因がなかなか分からないため、かかりつけ医から大きな病院へ紹介されることが大半で、高熱の中で再々の問診、検査を強いられる患者は「消耗しきった状態」になるという。
 心配する家族がインターネットなどで検索すると、悪性腫瘍や炎症性疾患の難しい病名が候補として次々に現れ、そのことも家族や本人を疲弊させていく。
▽保険が適応外
 標準的な手順を尽くし、ひと通り検査を重ねてもなお原因が明らかでない場合、陽電子放射断層撮影(PET)装置を使った検査が有用であることが分かってきた。FDG・PETと呼ばれる方法だ。
 通常の組織に比べて炎症や腫瘍に糖がより多く取り込まれることを利用する。ブドウ糖の分子の一部を、PETに写る元素である「フッ素18」に置き換えたFDGという物質を投与し、どこに集まるかを撮影して炎症や腫瘍が疑われる部位を調べる。
 従来の検査に比べて感度が高く、被ばく量が少ない。結果が出るまで約1時間半と、検査時間が大幅に短縮できることも利点だという。
 南本さんによると、FDG・PETは既に、不明熱の患者で診察や各種の検査を終えた次の手順として標準的に用いられ、欧米では保険医療で受けられるようにもなってきた。
 半面、日本では炎症や腫瘍の検査としては保険が使えるものの、不明熱は適応外。3割の患者は自己負担で検査を受けていた。日本核医学会などは、この検査を不明熱でも保険で使えるよう国に要望している。

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だらだらスマホ危険、増える若年層の「認知症」 脱スマホ脳の鍵「ぼんやりタイム」疲労減

2022年11月06日 22時31分55秒 | 健康の保持増進
だらだらスマホ危険、増える若年層の「認知症」 脱スマホ脳の鍵「ぼんやりタイム」疲労減
 2022年11月2日 (水)配信岐阜新聞

 今や日常生活に欠かせなくなったスマートフォン。気付いたら一日中だらだら使用していませんか? 何かをしながら常に触る「ながらスマホ」をしていませんか?。脳神経外科医で、おくむらメモリークリニック(岐阜県羽島郡岐南町)理事長の奥村歩さん(60)は「脳に絶えず膨大な情報が流入し続け、情報処理が追いつかなくなる『脳過労』の人が増えている」と、スマホ依存の危険性を指摘する。
 奥村さんは、2008年に同クリニックを開設。高齢の認知症患者を想定した「もの忘れ外来」だったが、ここ10年で患者がどんどん若年化しているという。主に30~50代の働き盛りの世代。「人や物の名前が出てこない」「今までできていたことが急にできなくなった」といった症状は、アルツハイマー型認知症と似ているが、多くは脳過労による「スマホ認知症」だ。
 新型コロナ禍でリモートワークが加速し、脳過労も急増。奥村さんは「長時間のスマホ利用が脳に及ぼす影響は、暴飲暴食が体に与えるダメージと同じ。日本人は健康志向なので、脳に対する意識も高めてほしい」と呼びかける。幸い「スマホ認知症」は、脳のメンテナンスをすれば回復が可能だという。
 ただ、脳過労は認知機能だけでなく健康も脅かす。脳のさまざまな調節機能に誤作動が生じ、腕や足などの原因不明の痛みのほか、動悸(どうき)や睡眠障害、めまいなどの症状も。脳過労が深刻なほど「ネットゲームやネットサーフィンといったその場の娯楽に走りがちで、依存症の悪循環に陥っていく」と警鐘を鳴らす。
 とはいえ、スマホは目的によっては、生活の効率をあげる便利なツール。奥村さんは「使うこと自体が問題なのではなく、『息抜きにスマホ』といった『だらだら・ながら』の使い方が危険」と強調する。
 では「脱・スマホ脳」のために今日からできることは―。奥村さんは、リズム運動やプチ座禅といった「ぼんやりタイム」をつくることや、いざという時以外はスマホに頼らず手間のかかる方法を選ぶ"デジタル・デトックス"を勧める。「意識的にスマホ時間を減らしてみて。脳が軽くなり、五感が敏感になると、幸せを感じやすくなる」と説く。
 奥村さんは9月に出版した書著「スマホ脳の処方箋」の中で、脳過労のメカニズムや症例、脳の疲れが取れる10の生活改善テクニックについて詳しく紹介。「デジタル社会はますます加速していく。脳をいたわりながら、デジタルツールと正しく付き合って豊かな生活を手に入れましょう」と話している。「スマホ脳の処方箋」は、あさ出版。四六判、200ページ、1540円。

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メタボ健診の指導に数値目標…「腹囲2センチ、体重2キロ減」で終了

2022年10月17日 22時36分03秒 | 健康の保持増進
メタボ健診の指導に数値目標…「腹囲2センチ、体重2キロ減」で終了
2022年10月17日 (月)配信読売新聞

 厚生労働省は、特定健診(メタボ健診)で生活習慣の改善が必要とされた人に行う特定保健指導について、「腹囲2センチ、体重2キロ減」とする達成目標を新たに導入する方針を固めた。具体的な目標を定めて成果を評価することで、適切な保健指導を行い、生活習慣病の予防につなげる。厚労省は2024年度の導入を目指している。
 メタボ健診は、40~74歳の人を対象に毎年度実施されている。腹囲や血圧などを測定し、生活習慣病のリスクが高いと判定された人は、保健師らによる食事や運動に関する特定保健指導を受ける。腹囲で男性85センチ以上、女性90センチ以上などが基準となる。
 新たな目標を導入した特定保健指導では、初回の面接から3か月以上たった後、腹囲2センチ、体重2キロ減に達していれば、指導を終了する。
 この目標が達成できなくても、▽腹囲1センチ、体重1キロ減▽睡眠前の食事や間食をやめた▽ランニングを始めた▽2か月以上禁煙――などを評価して基準を満たせば、指導終了となる。
 これまでの特定保健指導は、面談や電話を一定回数行うことが目標とされていた。厚労省の分析では、腹囲2センチ、体重2キロ減を達成すると翌年度も体重や腹囲、血圧の改善傾向が見られたことから、目標として設定することとした。

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血糖「高め」も筋力に注意 男性高齢者で低下リスク 「医療新世紀」

2022年10月06日 22時14分07秒 | 健康の保持増進
血糖「高め」も筋力に注意 男性高齢者で低下リスク 「医療新世紀」
その他 2022年10月4日 (火)配信共同通信社


 生活習慣病である2型糖尿病に至らなくても、血糖値が高めの男性は、筋肉量や筋力の低下など「サルコペニア」の状態に陥るリスクが高いとする研究結果を順天堂大の研究チームが国際医学誌に発表した。
 糖尿病になってしまった高齢者はそうでない人に比べてサルコペニアであるリスクが2倍を超えることも分かった。研究チームは、運動や食事などの生活習慣の改善に早期から取り組むことが、糖尿病に加えてサルコペニアの予防の面でも重要であることが示されたとしている。
 東京都文京区在住の高齢者を対象とした疫学調査「文京ヘルススタディー」から、65~84歳の高齢者1629人(男性687人、女性942人)の参加を得て、身長や体重、握力、筋力などの測定、歩行速度や片脚立ち検査などの身体機能を検査した上で、一定量のブドウ糖を摂取したときの血糖値の上昇を見る「耐糖能評価」を受けてもらった。
 その結果、男性では耐糖能が悪化するにしたがって段階的にサルコペニアの有病率が上昇。耐糖能以外の要因の影響を除いて分析すると、男性の糖尿病予備軍のサルコペニアのリスクは2・1倍になることが分かった。
 一方で女性では予備軍の段階ではリスクは高くならず、糖尿病と診断された場合にだけサルコペニアの有病率が高くなっていた。糖尿病まで進んだ場合のサルコペニアのリスクは、男性で約2・6倍、女性で約2・1倍だった。
 そのほかのサルコペニアと関連する要因を調べた結果では、男女とも「加齢」「(やせ体形であることを示す)低い体格指数(BMI)」「高い体脂肪率」がそれぞれ単独でリスクとなることも明らかとなったという。

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香取照幸氏に聞く 「かかりつけ医機能」をいかに実現するか

2022年09月18日 20時24分21秒 | 健康の保持増進

香取照幸氏に聞く 「かかりつけ医機能」をいかに実現するか

 2022年9月18日 (日)配信読売新聞
 

POINT
■「かかりつけ医」の制度化が議論されている。かかりつけ医には、日常的な健康管理と初期診療のほか、医療・介護の総合調整役を果たすことが求められている。その前提となるのが、地域包括ケアネットワークと、健康情報の連携・一元管理システムだ。

■ネットワークと情報連携を実施機関の要件とし、クリアした地域や組織に手を挙げてもらって、できるところからスタートするのが現実的だろう。かかりつけ医を持つことは患者の権利。希望する患者が実施機関を選択する方式が望ましい。

■かかりつけ医機能は、予防や健康相談、総合調整機能など保険診療で包摂できない機能を含むパッケージなので、費用保障のあり方を考える必要がある。診療報酬体系の考え方を変えて全てを医療保険で見るのか、「療養の給付」を超える部分について別の形での費用保障を考えるのか。特区のような制度を作り、保険者と実施機関の契約で、そこの被保険者についてだけ別の形の診療報酬体系にするやり方もあるかもしれない。それも保険者機能の発揮ではないか。

聞き手・構成 調査研究本部 林真奈美

 コロナ禍で、患者が適切な医療を受けられない事例が相次ぎ、地域医療の機能不全が露呈した。これを受けて、患者の健康管理に責任を持つ「かかりつけ医」の重要性が再認識され、2022年度の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」が盛り込まれた。それは具体的にどんなものなのか。どのように進めていけばいいのか。香取照幸・上智大教授に聞いた。

適時適切な医療・介護の総合調整役

 ――「かかりつけ医」の制度化が議論されている。かかりつけ医が果たすべき役割とは。

 かかりつけ医・かかりつけ医機能については、2013年の日本医師会と四病院団体協議会の合同提言で統一見解が示されている。その要素を分解してみると、〈1〉患者の生活背景を把握した初期診療および保健指導〈2〉専門医療機関の紹介〈3〉休日・夜間対応体制の構築〈4〉検診など地域保健への参加〈5〉保健・介護・福祉関係者との連携〈6〉在宅医療の推進および家族支援――などが求められている。つまり、健康な時から継続的に利用者に関わり、健康相談や予防接種などにも対応し、医療・介護全体で最適なサービスを実現させる「総合調整機能」と位置付けられる。

 これは、従来の一般的なイメージとは異なる。多くの患者にとって、かかりつけ医は必要な時に初期対応をしてくれる医師であって、健康な時は没交渉だし、変更も自由だ。あるいは、疾患ごとに複数いる「主治医」をかかりつけ医と認識している場合もある。日本は、受診するかどうか、どの医療機関に行くかどうかを患者自身が決める「フリーアクセス」を基本としている。制度的に患者の受診行動をコントロールできる仕組みになっていないため、一人一人の健康管理を特定の医療機関が一元的・継続的に責任を持つシステムが作られてこなかった。そのため、重複受診・重複検査、多剤投与といった問題はいわば不可避的に生じている。

 コロナ禍で、発熱患者が身近な診療所に相談したら受診を断られ、行き場を失うケースが相次いだ。一方で、病院はパンク状態になった。今回の教訓は、在宅医療を強化しておかなければ、同じような事態が生じた時に医療崩壊が起きる、ということだ。かかりつけ医機能の問題は、地域医療・在宅医療の強化という視点から考える必要がある。

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鳥取砂丘で熱中症続出、1日に4回ヘリ出動も…開放的な気分でも「走らないで」

2022年08月16日 22時58分49秒 | 健康の保持増進

鳥取砂丘で熱中症続出、1日に4回ヘリ出動も…開放的な気分でも「走らないで」

 2022年8月16日 (火)配信読売新聞
 

 猛暑が続き、鳥取の観光地「鳥取砂丘」(鳥取市)でほぼ連日、観光客などから熱中症の症状を訴える人が出ている。県によると、今月に入り15日間で30人が症状を訴え、前年同期の10倍に上る。重症の人もおり、県などは「予防のために、砂丘で走るなどの急激な運動は控えて。人との距離が取れる場合はマスクを外して」と呼びかけている。(林美佑)

 鳥取砂丘は東西16キロ、南北2・4キロに広がり、標高46メートルの「馬の背」の先に日本海を望むことができる。鳥取砂丘で熱中症を訴えた人は昨年度は19人だったが、今年はすでに大きく上回った。今月10日には搬送のためヘリコプターが4回出動した。

 8月の熱中症疑いの7割近くが馬の背周辺で起きている。砂丘の入り口から馬の背までは、一度下った後、砂に足を取られながら急斜面を登るため、往復40分ほどかかる。途中に休憩できる日陰などはほぼなく、直射日光が降り注ぐ。夏は砂の熱さが50~60度に上昇することもあり、日光の照り返しで体感温度も上がる。

 熱中症を訴える人は県外からの人が多く、10代や20代も多い。開放的な気分からか馬の背を駆け上がり、そこで動けなくなることもあるという。2020年8月には、県外在住の40歳代の男性が熱中症疑いで死亡した。男性は1人で観光に来ており、巡視している砂丘レンジャーらが異変に気づきにくいくぼみで倒れていた。県は昨年8月から、熱中症警報発令時に1日2回、ドローン(小型無人機)を飛ばして起伏に富んでいるエリアなどを巡視しているが、馬の背などでの救助事案が多いと、手が回らないこともあるという。

 県の担当者は「日傘や帽子で日差しを避けるとともにこまめな水分補給をして、体調が優れないときは無理をしないで」と呼びかける。車で家族旅行に訪れ、長距離運転の疲労からか砂丘で熱中症を訴えた例もあったという。

 帰省の途中で寄り、家族4人で馬の背まで登った埼玉県の40歳代の女性は「想像以上に急でしんどかった。行きはみんなマスクをしていたけど、途中で外す人が多かった」と話していた。

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医療現場で用いられている人工網膜

2022年08月12日 23時12分58秒 | 健康の保持増進

医療現場で用いられている人工網膜

 人工視覚の研究者はドーベル先生らだけではありません。2006年にはロンドン大学のリンドン・クルーズ先生らがArgus II(アーガス・ツー)という人工網膜システムを用いた臨床試験を開始しました。ドーベル先生らの研究が視覚野を直接電気で刺激したのに対し、Argus IIでは人工的な網膜デバイスを開発し眼球に埋め込みました。

 そして、外界の映像をビデオカメラで記録して人工網膜に送信することで、患者は視力を取り戻すことができるというわけです。

 5年間の臨床試験の結果、Argus IIによる視力上昇と安全性が確認され、2011年にEUで、ついで2013年にアメリカで視力低下患者に対するArgus IIの埋め込みが許可されました。2020年時点でArgus IIを利用している人は世界中に350人存在し、今後もその数は増えていくことが予想されています。

 人工視覚により視力を取り戻すことが研究段階の夢物語ではなく、実際に医療の現場で用いられている事実に驚いた人も多いのではないでしょうか?

 このようにArgus IIは素晴らしいテクノロジーですが、あくまでも人工網膜であるため、網膜から視覚野へと情報を伝達する視神経に障害がある場合には、視力を取り戻すことはできません。

 その点、ドーベル先生らの研究は脳の視覚野を直接的に電気刺激するため、網膜や視神経に異常があっても外界を「見る」ことができるというメリットがあります。

 とは言え、前述の通りドーベル先生らのデバイスはあくまでも68ドットの解像度しかなかったように、脳への直接的な刺激によって、複雑な文字やイラストを認識させることは非常に困難であると長い間考えられていました。

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