「受動喫煙-(1)」
日本の対策、大幅遅れ
産業医大の大和教授
迷惑なだけでなく、周囲の人の健康まで損ねてしまうたばこの煙。受動喫煙を防ぐための日本の対策は、諸外国に大きく後れを取っているのが現状だ。産業医大産業生態科学研究所 の大和浩教授に課題や展望を聞いた。
―受動喫煙の健康リスクは。
「職場で同僚のたばこの煙にさらされている非喫煙者は、禁煙の職場で働いている人に比べ、肺がんになる危険性が24%高くなります。スコットランドでは飲食店など公共の場所での喫煙を法律で禁止した結果、住民の心筋梗塞が1年後に17%減少しました」
―海外の規制は。
「1960年代に喫煙者本人への有害性が科学的に立証され、80年代に受動喫煙の有害性が示されました。90年代に米カリフォルニア州などで建物内を禁煙とする条例が始まり、喫煙室の設置も認めない全面禁煙を内容とする国レベルの受動喫煙防止法は、2004年のアイルランドに始まり、英国、ウルグアイ、ニュージーランド、トルコで施行されています」
「イタリアやフランスなどでは喫煙室の設置基準が厳しく、実質的な全面禁煙となっています。先進国できちんとした対策を講じていないのは日本ぐらいだと言えます」
―日本の現状は。
「05年に発効した世界保健機関(WHO)のたばこ規制枠組み条約は、受動喫煙の防止策を取るよう締約国に求めています。具体的には今年2月までに、公共の場所を原則として全面禁煙とすることが合意されました。日本は04年に条約に署名しましたが、受動喫煙に関しては努力義務にとどまる健康増進法しか定めていません。厚生労働省 は期限である2月末になって、官公庁や医療機関などを全面禁煙とするよう通知を出しました。政権交代の効果とも言えそうです」
―4月施行の神奈川県受動喫煙防止条例 について。
「公共の場所の全面禁煙という、国がやるべきことを地方が始めた、非常に意義のある条例です。業界の反対で小規模な飲食店や、パチンコ店などの風営法施設が対象外になりましたが、まず規制を始めることを重視した建設的な妥協といえます。学校や病院、官公庁が全面禁煙となり、罰則も定めました。条例をきっかけにマクドナルドが全面禁煙を、ロイヤルホストが全席禁煙を打ち出し、すでに大きな効果が表れています」
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やまと・ひろし 86年産業医大卒。呼吸器内科を経て、アスベスト代替繊維の生体影響や職場の喫煙対策、受動喫煙対策などを研究。06年から現職。福岡県出身。(共同通信 吉村敬介)(2010/03/23)
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