コロナ感染疑い市民を医療機関に送り届ける救急隊 自らの感染不安もつきまとった3年間 「ありがとう」ねぎらいの言葉が染みた
新型コロナウイルス感染が疑われる市民の容体を早く、正確に知り、症状に合った医療機関に送り届ける「医療の入り口」としての責務は大きい。この道23年、結核や新型インフルエンザなど感染リスクと隣り合わせの現場経験はあるが、3年にわたる長期戦は初めてだ。
発熱の有無、感染者との接触、流行地への訪問-。会話がままならない搬送者も少なくない中、感染疑いが強い患者ほど必要な聞き取りは増える。
「すぐに搬送先を探すので安心してくださいね」。患者の気持ちを和らげようと、穏やかに接することを心がける。接触時間を減らし、迅速に搬送するため、出動先に向かう最中は通報者や同居する親族らへの情報収集に徹する。
コロナを特別視はしていない。全ての救急搬送で細心の注意を払う。ただ、見えないウイルスを前に「感染して同僚や家族、搬送先の病院に迷惑をかけないか」との不安は常につきまとう。
感染死した著名人の報道を見た当時小学6年の息子に「死なないでね」と言われたことがある。家族と寝室を分け、高齢の両親と会うのを控えた時期もあった。
暗い出来事ばかりだったわけではない。2021年7月、種子島からヘリコプターで運ばれたコロナ陽性者の40代男性をマリンポートかごしま(同市中央港新町)で引き継ぎ、医療機関に送り届けた。
炎天下、汗だくで救急車の消毒をしていると、看護師が冷たい飲み物を差し入れてくれた。「立場は違えど、気持ちは一緒だ」と励まされた。
感染拡大以降、医療機関や保健所と連携はより密になった。「お疲れさま、大変ですね」「ありがとう」。互いをねぎらう言葉が増えた。コロナ前もあったやりとりだが、うれしさが一層身に染みる。救命のリレーをつなぐため、自分たちも頑張ろうと踏ん張れた。
「より患者の命に近い仕事がしたい」と2年前から同じ救急隊に従事する久松徹主任(37)にも支えられた。休憩時間に釣りの話をしたり、時には愚痴を言い合ったり。休日に息子のサッカー観戦をするのも癒やしになった。「ストレスをため込まないよう息抜きも大切」とメリハリを心がける。
政府は大型連休後の5月8日、コロナの法的位置付けを季節性インフルエンザと同等の「5類」へ引き下げる。「一人一人が感染させない、感染しない意識を持ち続けてほしい」と訴える。「感染防止には関係機関はもちろん市民の理解と協力が必要不可欠。一人でも多くの命を救えるよう手を取り合いたい」
(連載「かごしまコロナ 揺れた3年」より)
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