腎臓移植1300件 80歳過ぎても第一線に
地域 2022年10月17日 (月)配信共同通信社
白衣の袖をまくり上げ、一年中サンダル履き。風貌は粗野でも接する態度は温かく、信頼を寄せる患者は多かった。14日、81歳で死去した万波誠(まんなみ・まこと)さんは愛媛県宇和島市で半世紀にわたり泌尿器科医として働き、手がけた腎臓移植は1300件を超える。同業者が尻込みする難手術も断らず、80歳を過ぎてなお執刀を続けた。
2006年、2人が逮捕された国内初の臓器売買事件で腎移植を執刀。不法行為への関与はなかったが、仲間の医師と続けてきた「病気腎移植」を事件発覚後に公表した。厚生労働省からいったん禁止され、不本意な日々を過ごした。
山口大医学部出身。勤務した市立宇和島病院(愛媛県宇和島市)の上司に「移植を学びたい、駄目なら病院を辞める」と米国留学を志願し、世界屈指とうたわれた移植医に師事した。
処分予定の野犬を役所から譲り受けて手術の練習を繰り返し、週2、3回の山登りで体力を維持。飲酒や喫煙はせず、晩年は糖質を制限して自己管理に努めた。
親しい医師は「万波は形式的な会議や手続きが嫌い。患者を助けることしか興味がない」と評する。腕の良さを聞きつけた東京の大病院にスカウトされても断った。
臓器売買への関与を疑われ、ドナー不足を背景に取り組んだ病気腎移植は日本移植学会とメディアに批判された。「あれは弾圧じゃった」。生涯消えない傷となった。
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