「コロナ広める」救急隊員は病院内コンビニ利用お断り?「差別だ」病院側否定も消えぬ疑心暗鬼
県内自治体の消防に勤務する男性救急救命士から「救急隊員が新型コロナウイルス禍の感染を広めているとして、院内のコンビニエンスストア利用を断っている病院がある」という情報が「追う! マイ・カナガワ」取材班に寄せられた。事実であれば、許されない差別ではないだろうか。取材班は男性救命士に話を聞きに行った。
救命士として20年のキャリアを持つ男性が異変を感じたのは今春のことだった。横浜市内のある総合病院が、救急隊員に院内のコンビニの利用を禁じていることを耳にしたという。
「同院の医師が『救急隊員がコロナの感染を広めている』と言っていると。根拠のない話。救急隊と医師は仲間と思っていたのに、まさかこんな差別を受けるとは...」。声を震わせる男性は、救急隊のコロナ対策について「使い捨ての不織布の感染防止衣を着用し、搬送任務後に廃棄している。救急車の車内や通常時の感染防止衣も徹底的に消毒しています」と説明した。
コンビニ利用拒否の情報は文書などで示されたわけではないが、男性の所属先だけでなく近隣自治体の消防隊員の間でも共有されていたという。男性は怒りを抑え、「是が非でもそのコンビニを使いたいわけではない。医療従事者が、医療従事者から差別を受けていることを知ってほしい」と思いを語った。
男性を取材した後、7月末に動きがあった。横浜市消防局が市内の病院向けに、救急隊員の病院内のコンビニ利用を求める通知を出したのだ。男性によると、通知を受けて同院のコンビニも利用できるようになったというが、仲間同士では今も病院に対して疑心暗鬼になっているという。
一方、同院の担当者はマイカナの取材に、「これまで救急隊のコンビニなどの利用を拒否したことはありません」と回答した。
◆呼べば来るもの
「ちょっと信じられない話。行き違いが起きているのではないか」と指摘するのは同市消防局で救急隊員を務め、現在は国士舘大体育学部で救急隊員育成に携わる張替喜世一教授(救急現場学)だ。
同教授は、そもそも消防局がコンビニ利用に関する通知を出さざるを得ない状況について、「例えば米国では、救急隊は『自分たちを守ってくれる人』と尊敬する文化があるが、日本では救急隊は公務員で『呼べば来るもの』という権利意識が強い。搬送された経験のない人は特に理想論で言ってしまいがち」と残念そうに解説する。米国では搬送された人が救急隊員にチップを渡したり、救急隊がファストフード店に立ち寄ると、混んでいても市民が列を譲ったりすることもあるという。
教授は「文化や国民性を変えるのは難しいが、尊敬の念を持って対応してもらえれば隊員の励みになる。(今回の問題は)お互いが誤解している部分があるかもしれない。当事者同士が話し合って解決してほしい」とした。
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