土手を下り帰ろうとするボクを待つように、野良着姿のおばあさんがボクを見ている。
暑いのによく頑張るねえ・・・かなと思いつつ走り過ぎようとした時、声を掛けられた。
「おとうさん、胡瓜いらねがや(いりませんか)?」
心の中は「やったあ!うれしい!」でも、そこは謙虚に「いただけるものなら・・・」
すぐそばにある畑の奥へ入っていくおばあさんの後についていった。
「おばけ胡瓜だけどね。上ばかり収穫していて、下になってるのに気が付かなかったの。」
ジョギングスタイルのボクには、せいぜい、このぐらいが限度。
短パンに汗だくのTシャツ、両手に胡瓜を二本ずつ持って走るボクは・・・、畑泥棒か。
やったあ!うれしい!の訳は、夏季限定のボクの毎日の昼食にある。
蕎麦でも冷麦でも、麺が隠れてしまうほどの大根おろしと胡瓜をぶっこむ。
夏はこれがうめんだなあ。これにトマトがあれば、なお、結構。
それにしても、ジョギング帰りに「いただきもの」をするなんて、初めてのことだ。