カンヌで正式上映されたナンニ・モレッティ監督・脚本作品
監督自身も裁判官の夫として登場している。
イスラエルの作家エシュコル・ネヴォのベストセラー小説
「三階 あの日テルアビブのアパートで起きたこと」を原作に書き起こしたらしい
原題の「Tre piani」は 三つの階
邦題では「鍵」となっているのがやはりよくわからない
パルム・ドールを受賞した「息子の部屋」の母の面差しが浮かんでくる
ある晩の自動車事故をきっかけにそれぞれの家族の不穏のとばりがおり
だんだんとひろがってゆく
奥底に沈んでいた澱が浮き上がるように 家族は懊悩し葛藤するが
やがてバラバラになってしまう
それぞれの登場人物の心模様
車に突っ込まれた部屋に住む夫ルーチョの異常な勘繰りはどうしてなのだろう
彼の幼年時代に何があったのか、蓋をしていたはずのトラウマなのかもしれない
夫と離れて一人で暮らすモニカの孤独は悲惨だ
ひとりで出産し、だれも頼る人のいないのはどうしてだろう
精神病の母親を持つ恐怖は誰にも相談できないことなのだろうか・・・
子供を産むというのに、どうして前もって手を打っておかないのか
私にはとうてい理解しがたかった
行政もコミュニテイーもイタリアらしくなさ過ぎる
モニカの幼さとも思えない
裁判官夫婦の一人息子アンドレアの幼さが際立っていた。
父親の愛情を感じられずに育ち、それを可哀そうに思う母親の過保護のはての姿
本人は十分わかっていたのかもしれない
それでもまともになれないもどかしさ
みな自分で何とかしようとあがきづづける
プライドなんか捨てて、もっと心を開いていければよかったのに
それでも
5年、10年と歳月をかけて だんだんと闇が薄明るくなっていく
陽気でおしゃべり好きで家族的なイタリア人はどこにもいなかった
ママンが腕を振るった料理を囲む家族たち
声を掛け合い助け合って暮らすイタリア人なんていないのかしら
ローマの高級住宅地に住む裕福な家族たち
本当は個性的で度が過ぎていて、家族は歪んで崩れかけていただけのこと
なのかもしれないけれど・・・
最後のシーンで陽気にアルゼンチンタンゴを踊る
たくさんの人々と音楽に救われた
「ほら、一緒に踊りましょうよ」と心の中でささやいていた
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