アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

牛の鈴音

2010年12月18日 | Weblog
 北朝鮮国内で、韓国の映画やドラマを観たとして、「教化所」に収監される北朝鮮住民が増加しているのだそう。どうやって観たのでしょうか?地下に集まって、密かに持ち込まれたDVDを観た…そのあたり謎めいております。情報の出所が「NK知識人連帯」(NHKとは無関係)。この団体は、韓国在住の脱北者団体。主に、知識層出身の脱北者らで構成されているもの。信頼できる筋でしょう。

 北朝鮮の、平安南道というところの「教化所」では、収監者3,000人のうち、韓国映画やドラマを観たとの理由で収監された人は3分の1を超える1,200人に上るという。服役期間は2~5年で、一般収監者に比べ、過酷な労働を強要されるという(読売新聞ソウル支局)。と、いうことは、生きて教化所を出るのは難しそう。韓国映画やドラマを見るのは決死の覚悟が必要ということです。

 韓流というものについては興味がない私ですが、「牛の鈴音」は、自発的に観ました。
 冒頭からしばしの間、いわゆる映画なのかドキュメンタリー映画なのか判然としなかった…ストーリーが進行し、出演者が役者ではないことが解った。つまりドキュメンタリーでした。まだ御覧になっておられない人のため、あらすじの紹介は割愛します。しかし、秘守義務はないので関連情報を少々…

  牛の鈴音は、韓国で観客動員数累計300万人という大ヒット。インディペンデント映画としては、歴代最高収益率なのだそう。
 舞台は、2005年の韓国の農村。農業の機械化が進む中、牛とともに働き、農薬も使用せず、頑固に昔ながらの方法で畑を耕す老夫婦の日常を静かに見つめる…。
 ただこれだけなのです。それなのになぜ韓国で300万人も集めたか?「韓国人の原風景が描かれている」からだと思います。日本人の反応はどうか?好意的な感想は少ないでしょう。日本人の原風景とも共通するのですが、今日本人は、「ただ黙々と働き、牛と心を通わせる老人の日常」に、心の琴線が震える人の割合が減ってしまっていると思います。

 北朝鮮の地下で、「牛の鈴音」は放映されたでしょうか?観たとして、見終わった今は、教化所で重労働でしょうか?
 日本で観た私は、牛は飼っていませんが、老人の実に平和な日常に戻っています…。