アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

くず餅が「発酵食品」!

2020年05月22日 | Weblog
 くず餅って、「くず粉と水を鍋に入れ、中火にかけて砂糖を加えよく混ぜる。沸騰直前で弱火にして、透明になるまでかき混ぜる。器に流し込み、型ごと氷水につける。冷えてきたら取り出し、きなこと砂糖を混ぜたものをかけたら完成」ですよね。1時間もかからないうちにできあがる。
 と、ところが、「450日かけて作って、賞味期間は2日間」という、くず餅屋さんがありまして…!
 なぬ?「あり得ない」って?あり得ないことが、「ある」。これが、おもしろいんです。
 袖の下をいただいているわけではありませんが、450日かけてくず餅を作るくず餅屋さんは、世界中探しても一軒だけだと思いますので、実名で話を続けます。 本店を東京都江東区亀戸に置く「船橋屋」さん。日本で一番有名でしょうから、ご存じの方も多いかと。私も「船橋屋さん」は、50年前から知っていました。が、「450日」はこのほど初めて知りまして、「くず餅作りに450日かける」この感動が冷めないうちにこの文章を書いてしまおうと、今書いているわけです。
 創業が、文化二年(1805年)、十一代将軍徳川家斉の頃…これにも驚きますがね。
 船橋屋では、「厳選した小麦粉のでんぷん質を約450日間、乳酸発酵でじっくりと熟成させる」。
 450日というのは、熟成期間。時間に仕事をさせている。そういうことかと、理解しました。
 くず餅の発酵期間は、通常、ほぼ1年(365日)で良いのだそう。1年だけでも「凄いなあ」と、思います。しかし、船橋屋さんは、「歯ざわりや弾力」を追求し、試行錯誤を繰り返した結果、450日で発酵させたくず餅が、一番よかったのだと。
 450日は、感動しながら納得したのですが、野次馬としましては、新たな疑問が。「乳酸発酵」ってのが、気になってしょうがない。くず餅にヨーグルトでも混ぜているのか?
 船橋屋さんによると、お客さんから、「くず餅を食べると胃腸の調子がよい」という声があったという。そこで、医療機関に分析を依頼したところ、小麦でんぷんを発酵させる樽から新種の乳酸菌「くず餅乳酸菌」が見つかったのだと!
 なぬ?「くず餅乳酸菌は、アンティークマンの創作だろう」って?いかにも私の創作っぽいネーミングですが、本当の話なんです。
 「樽」から、「くず餅乳酸菌」が見つかった。このことを聞いて。「清酒醸造の蔵付き酵母(くらつきこうぼ。家付き酵母ともよぶ)」を思い起こしました。「ロマン」ですよ。
 清酒醸造では、酵母など入れません。古くからその酒造・酒造場に住み着いている酵母があるのです。ですから、自然に酵母が入る。そのため蔵によって異なる「蔵付き酵母」がその蔵独特の香りと味を醸しだす。
 ただ、近年は、日本醸造協会などが頒布している優良酵母(アンプル詰)を用いることが主流となっています。なぜそうなってきたかって?
 純粋培養の酵母を大量にタンクに入れて仕込みます。安定した品質の酒にするには優良酵母を買って使った方が簡単だから。しかし、蔵付き酵母も黙っちゃいない。 優良酵母を入れたタンクに、蔵付き酵母が叡智を結集して入り込み、その蔵特有の香味を生みだす。もっとも、優良酵母も、元々は、酒蔵の蔵つき酵母を採取・純粋培養したもの。 
 閑話休題。船橋屋さんのくず餅を食べると、「胃腸の調子が良くなる」。「くず餅乳酸菌」が入っているから。で、船橋屋さん、「和菓子屋ですが、皆さんの健康のお役に立てればと思い、まずはサプリメントとして販売することにしました」と。
 「450日かけて作って、賞味期間は2日間(防腐剤や保存料を一切使っていないから、わずか2日間)」
 「くず餅に、くず餅乳酸菌が入っている(日本古来の発酵の力)」
 船橋屋さん、間違いなく「日本一、いや世界一のくず餅屋さん」です。
 あー、感動した!