実は今回のホッホハイム詣では遠慮しようと思っていたヴェルナー醸造所にも立ち寄った。
主な理由は、あり余る時間が出来たのと、エルトヴィレで二件とも用を無さなくて、尚且つもう少し買えるかと思っていたクュンストラー醸造所の規模があまりに小さかったことにも原因がある。
要するに体の疲れを抱えながら燃料代と時間をかけながら、十分な収穫が得られていなかったのである。そしてなによりも、キュンストラー醸造所は醸造技術などでは恐らく一流の域に達していて、あまりにも美しくない排気ガスや汚染物質の危惧のあるこのただ唯一現存する歴史的なマインのワイン栽培地域にて、清潔で純度の高いワインを醸造しているのは確認出来た。その反面、ホッホハイムのリースリングの素晴らしさを余すことなく紹介しているかというと大変疑問に思われた。
やはりなんと言っても地所ドムデヒァナイで高名なヴァルナー醸造所のそれには到底及ばない。ヴェルナーの門を出て帰りがけに、何処やらの親仁達が、
「まだ、ここはヴェルナーかい?」と失礼な事を宣ので、
「そうよ、あんたがた試飲しないのかい?」
「まだ、キュンストラーとは違うのか」と更に言うので、
「いいワインだから、試飲していきなさい」と、「あんたここの人」と言われるほどに叱っておいた。
なるほど、庭弄りや世話をする親仁達もお疲れ様の時間が来たら、ヴェルナーの門を出てキュンストラーの中庭へと道具を片付けに帰って行く。
しかし、初めて試飲した「グランクリュ」ドムデハァナイは、十五年ほど前のそのシュペートレーゼを髣髴させてくれた。
なるほど2006年産は既に熟成香が出てきていたが、ご主人に明言しておいた。
「2007年産は、まだまだ一年ほどでは微動だにしませんよ」
「そうかな」
「エルストエスゲヴェックスはどれぐらいやってます?」
「十年ぐらいかな。飲むのに二年ぐらい置いて更に長持ちするのがリースリングだからね」と、
ご主人は2003年産の奉仕品のホッホハイマー・シュタインを奨める。
「暑い夏の割に、酸は十分に効いてますね」
グーツヴァインである州の金賞を取ったものは石灰分も十分な様で、最初の口当たりはピノブランのように重みがあって苦手であるが、二口三口飲んでいくととてもリースリングらしい風味が湧き上がって最後にはパパーミント系の味が出てくるのである。
キュンストラーの辛口リースリングが最初から香り高いのと比べて、如何にもスロースタターであるが、食事にはこれがとてもよい。それと引き換えキュンストラーのものは、基本的にはミュラーカトワールの6ユーロのグーツワインと同じ傾向の商品であるが、リースリング以外のマスカットのようなおかしな香りを燻らせる。そして時間が経つと、ミッテルラインのような臭みが出てくるのである。しかし流石にこれらのワインは双方ともアルコール度12.5パーセントと高く、バランスが翌日にも大崩れしないのは高級ワイン協会VDPの面目躍如であろう。
この二つの価格差が丁度一ユーロであり、後者の価格ならばフォン・ブール醸造所のヘアゴットザッカーより僅か20セント安いだけなのである。それならば到底競争出来ない。しかし、前者の7ユーロ50は、買い付けた葡萄で作ったブール・リースリングの価格であるからして、ヴァルナー醸造所に間違いなく軍配が上がる。
なるほど清潔感のあるワインの平均値では、キュンストラー醸造所の方が上であるが、特別素晴らしいグランクリュ・リースリングやお徳なリースリングではヴェルナー醸造所はまだまだ健在である。
「ほら、六本入りで持って帰ると都合が良いからさ」
「いや、グランクリュ六本は厳しいな。安いのを混ぜますよ」
参照:複雑な香辛料の味覚 [ 試飲百景 ] / 2006-02-25
主な理由は、あり余る時間が出来たのと、エルトヴィレで二件とも用を無さなくて、尚且つもう少し買えるかと思っていたクュンストラー醸造所の規模があまりに小さかったことにも原因がある。
要するに体の疲れを抱えながら燃料代と時間をかけながら、十分な収穫が得られていなかったのである。そしてなによりも、キュンストラー醸造所は醸造技術などでは恐らく一流の域に達していて、あまりにも美しくない排気ガスや汚染物質の危惧のあるこのただ唯一現存する歴史的なマインのワイン栽培地域にて、清潔で純度の高いワインを醸造しているのは確認出来た。その反面、ホッホハイムのリースリングの素晴らしさを余すことなく紹介しているかというと大変疑問に思われた。
やはりなんと言っても地所ドムデヒァナイで高名なヴァルナー醸造所のそれには到底及ばない。ヴェルナーの門を出て帰りがけに、何処やらの親仁達が、
「まだ、ここはヴェルナーかい?」と失礼な事を宣ので、
「そうよ、あんたがた試飲しないのかい?」
「まだ、キュンストラーとは違うのか」と更に言うので、
「いいワインだから、試飲していきなさい」と、「あんたここの人」と言われるほどに叱っておいた。
なるほど、庭弄りや世話をする親仁達もお疲れ様の時間が来たら、ヴェルナーの門を出てキュンストラーの中庭へと道具を片付けに帰って行く。
しかし、初めて試飲した「グランクリュ」ドムデハァナイは、十五年ほど前のそのシュペートレーゼを髣髴させてくれた。
なるほど2006年産は既に熟成香が出てきていたが、ご主人に明言しておいた。
「2007年産は、まだまだ一年ほどでは微動だにしませんよ」
「そうかな」
「エルストエスゲヴェックスはどれぐらいやってます?」
「十年ぐらいかな。飲むのに二年ぐらい置いて更に長持ちするのがリースリングだからね」と、
ご主人は2003年産の奉仕品のホッホハイマー・シュタインを奨める。
「暑い夏の割に、酸は十分に効いてますね」
グーツヴァインである州の金賞を取ったものは石灰分も十分な様で、最初の口当たりはピノブランのように重みがあって苦手であるが、二口三口飲んでいくととてもリースリングらしい風味が湧き上がって最後にはパパーミント系の味が出てくるのである。
キュンストラーの辛口リースリングが最初から香り高いのと比べて、如何にもスロースタターであるが、食事にはこれがとてもよい。それと引き換えキュンストラーのものは、基本的にはミュラーカトワールの6ユーロのグーツワインと同じ傾向の商品であるが、リースリング以外のマスカットのようなおかしな香りを燻らせる。そして時間が経つと、ミッテルラインのような臭みが出てくるのである。しかし流石にこれらのワインは双方ともアルコール度12.5パーセントと高く、バランスが翌日にも大崩れしないのは高級ワイン協会VDPの面目躍如であろう。
この二つの価格差が丁度一ユーロであり、後者の価格ならばフォン・ブール醸造所のヘアゴットザッカーより僅か20セント安いだけなのである。それならば到底競争出来ない。しかし、前者の7ユーロ50は、買い付けた葡萄で作ったブール・リースリングの価格であるからして、ヴァルナー醸造所に間違いなく軍配が上がる。
なるほど清潔感のあるワインの平均値では、キュンストラー醸造所の方が上であるが、特別素晴らしいグランクリュ・リースリングやお徳なリースリングではヴェルナー醸造所はまだまだ健在である。
「ほら、六本入りで持って帰ると都合が良いからさ」
「いや、グランクリュ六本は厳しいな。安いのを混ぜますよ」
