Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

賞味保障、期限2025年

2008-10-19 | 試飲百景
嘗て近所に住んでいた日本からの駐在員が遠くからワインを購入に訪れた。今回は、日本へ持ち帰れるワインであるグローセ・ゲヴェクセもしくはエルステ・ゲヴェクセと呼ばれるグランクリュワインをどれだけ見極められるかが焦点であった。

結果として大変良い買物が出来たと思うが、同時に試飲の難しさも再確認した。グランクリュワインはアルコールも強く、何もかもが高い水準で拮抗している。つまり、経年変化で初めて丸みを帯びて素晴らしいボディー感と繊細さを帯びてくるワインがよいワインなのである。

幸運ながら、二件で五種類のそれを試飲することが出来た。先ず、フォン・ブール醸造所にてウンゲホイヤーとペッヒシュタインが比較試飲される。前者は、女性の試飲者には十分にスパイシーさがありあまりにも力強過ぎたようである。それに反して後者の玄武岩土壌のものはその独自の味とクリアーさが気に入られた。

最低二年ほど経たなければその真価が出ないのがこの土壌のリースリングであるが、それが逆に今の時点での細さが「葡萄ジュースに様々な要素が乗って、冷して飲む梅酒のような感覚」に受け取られたようである。

勿論幾ら高価なものであろうが、好きな時に好きにして飲むのは購入者の勝手であるが、現時点ではこれをワインとは言えない。それを説明しようとしてもなかなか難しい。自己の経験を踏まえて言うならば、新しいワインは蒸留水に味がついているようなもので、「古いワインは若者には飲ますな」の諺と丁度反対の意味になる。「古いワインの方が価値があると言う神話」が流布しているのは、まさに「こうした若いワインはワインではない」ということの裏返しなのである。

要するに、そこに含まれる意味は本当のワインが出来上がるには熟成が必要だと言うことなのである。そして、その熟成は、知るものぞ知るペッヒシュタインの玄武岩土壌から出来たワインの独自な素晴らしい白っぽい花の楽園の香りが広がる時なのである。他に比喩のしようがない。

二件目のフォン・バッサーマン・ヨルダン醸造所では、ホーヘンモルゲン、ペッヒシュタイン、イエーズイテンガルテンを試飲した。最初のものが以前に感じた苦味がフローラルなワインに包まれるようになって、もっとも華やかな感じのリースリングとなっている。僅か一月の差でもこうしてワインは瓶の中で落ち着いて成長し続けている。カルクオーフェンなどに続いて最も飲み頃が近いワインであろう。

二つ目のペッヒシュタインは、先ほどのものと比べると遥かに内容物が豊富でアルコール分もはちきれるようである。その反面、まだまだ固い蕾のように何一つ開いておらず、本来の香りも皆無であるが、この時点で深いアルコールの中から大器晩成な素養を十分に評価出来るかどうかである。

三つ目のものも一つ目のものをより充実させたものであるが、長く寝かすことによって初めてその真価が表れるもので、その意味から完熟を待つ甘口ワインに通じるものがある。

結局、ここでもペッヒシュタインが選ばれたのだが、フォンブールのものよりもその価格相応に評価が難しくなっていく。価格が張るほど、つまり長持ちするワインほど評価が難しくなって行くのはボルドーワインなどと同じで、素人には若いうちの評価が難しく直ぐに入手困難となるとすれば、今後グローセゲヴェクセ専門のネゴシアンのような業者が増えるのだろう。

そして世界的なブームとなれば、今回木箱入りで購入した2025年まで保障されているキルヘンシュトックやその頃に本格的に魚料理などに愉しめるペッヒシュタインは一体幾らの価値がついているのだろう?少しずつ集めるなら今のうちだが、なかなか高価でおいそれとは木箱入りで買えないのも事実である。



参照:
新しいぶどう酒を - 断食についての問答から [ ワイン ] / 2005-03-01
敬語の形式 [ 文学・思想 ] / 2005-01-27
試飲百景-アイラークップの古いワイン [ 試飲百景 ] / 2005-01-22
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする