Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

We do not sell wine.....

2008-10-08 | マスメディア批評
ドイツで「無名」の醸造所が日本や米国で超有名である話がFAZ経済欄を飾っている。所謂隙間産業の商品を扱っている。そこに挙がるモーゼル・ザールの醸造所エゴンミュラーとJJプリュムとローゼンは、彼らの甘口ワインを殆どそれらの相手国に売ることで有名になっていることが書かれている。

もちろん、ワインの情報に全く関心ない人や普通のたとえワイン処のドイツ人にとってはそれらの醸造所の名前は未知であり、なにもそれらだけではなくここで扱うような醸造所の名前も近所に住んでいるかそれともワイン関係の人でなければあまり馴染みがない。

しかし、無名というのは流石に挑発的な書きかたである。業界関係者においても、彼らの2007年産のそれを試飲する機会を得て思いがけず良かったと出合いを喜ぶ人があるぐらいで、決して無名ではない。

それにしても、新聞紙上でこうした隙間産業の小さな市場で奮闘するエゴン・ミュラー氏が紹介され、「隙間市場だけでも十分だ」とする見解が述べられている。そのためにオーナーは、夏場に自宅にてワイン地所を監視して、冬場になると早速「よいワインが市場に溢れている世界中」をセールスに歩くらしい。そうして、絶えず新興マーケットである中国などの主に「甘い食事をする文化圏」の顧客を惹きつけてしまうようだ。

「甘くてねちゃねちゃする」として80年代から国内市場では嫌われ始めた甘口ワインもこうして台湾や中国などの極東市場を開拓して、十年前からリースリング専門となったこのザールの名門醸造所のワインは、その生産量の95%が輸出される。だからドイツ国内では殆ど例をみない「We do not sell wine at the estate!」と自家売りをしないといっても、その意味は殆どないに等しい。

さらに、86%を輸出に頼るローゼン醸造所の川岸の家の写真が添えられて、そのオーナーの特異な人間性も具に観察されて伝えられていて面白い。嘗ては裁判官を目指したと言う氏は、世界行脚は変わらぬものの自らの地所に出て葡萄の手入れや摘み取りをすると言う。オーストリアから甘口ワインを拵えるためにバルクで売られた不凍液の混じったワインで大打撃を受けたドイツワインを熱心に海外でセールスする。妻帯後も同棲している信頼すべき醸造親方に全てを任せる。

また、J-J-プリュムの長女が米国で経験まで積んだ法律家ながら、その家族の歴史を継いで、若い女性当主としてPRに奔っていることをしてその母親が「家族の伝説」として記事が結ばれているのを読んで、「ああ、あの奥さんや家族の雰囲気が出ているわい」とこちらはほくそ笑むのである。

ローゼン氏に言わせると「諸悪の根源であるリーブフラウミルヒ」の生産地のラインヘッセンで、辛口を得意とするヴィットマン醸造所は、出荷量の30%に当たる十五万本を年間輸出しているのに対して、そこでも70%が輸出に廻されていると言うから我々が少々立派なワインをお土産に購入しても大した経済的な意味は持たないようだ。


写真:ウンゲホイヤーに捨てられた絞り粕



参照:
Es gibt zu viel guten Wein auf der Welt von Lena Bopp, FAZ vom 4.10.08
1997年の辛口リースリング [ ワイン ] / 2004-11-11
香りの文化・味の文化 [ ワイン ] / 2008-06-07
ワイン三昧 第五話 [ ワイン ] / 2006-11-04
継続的に体で覚えるもの [ 生活 ] / 2008-08-28
指定されたラインの名物 [ ワイン ] / 2007-07-04
つい魔がさす人生哲学 [ 文学・思想 ] / 2007-10-20
ユネスコ文化の土壌 [ アウトドーア・環境 ] / 2008-06-03
コメント (4)
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