Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

「秩父宮」を通した官僚主義

2014-04-06 | 歴史・時事
一月に日本から取り寄せた文庫本に一通り目を通した。退屈することも無く、読み急ぐことも無く、気持ちよく時間をかけて読み進んだ。保阪正康著「秩父宮」である。保阪氏には、昨年、現在の政府に対する意見などの記者会見での歴史的な解釈に関しての言及で興味を持った。そして其の著作を見ると、私自身が其の故人の足跡を追うことの多い「秩父宮」がリストアップされていた。其の名の通り、登山の宮様として有名な昭和天皇の弟であり、一昨年も其のスイスアルプスでの軌跡を辿ったのである。

残念ながら故人の登山に関しての記述は殆ど省かれているが、其の活動の大枠を把握することが出来た。それ以上に、著者の専門とする昭和史やまさに現在に繋がる日本の問題が明白に描かれている。日本の皇室問題は日本社会の問題でもあるということは、そのまま現在にも引き継がれて全く変わらないということを示している。

登山関連では、その活動以上にとても興味深い人脈が浮かび上がってくるので、それについては改めて纏める。そしてなによりも奇しくも先日来話題となった天皇の火葬や葬儀に関して、天皇ではないにしても秩父宮が本人の意思で無宗教で火葬にされていたとは知らなかった。宮内庁やそれを取り巻く軍を含む行政官僚の思惑と祭り上げられている天皇家や所謂日本の右翼思想歪さの中に、明治以降の立憲君主制の問題点が明らかにされる好著である。

なるほど、その歴史の描き方などは、「生きた人間を通して」と評されるように日本文学の特徴である著者と読者の共感と言うような読者の思考のみを通した受け手人物大の人間表現しか出来ていないのであるが、日本で歴史小説と称するノンフィクションものは全て同じような「私小説」であることからすれば致し方ないであろう。そうした日本文学や文化の質は、近代の官僚主義とも、荒唐無稽の国家神道主義とも関係しているのだろうか。



参照:
首都解体への都知事選 2014-02-08 | 歴史・時事
奥崎、安倍晋三を撃て! 2013-12-28 | 歴史・時事
草臥れ果てた一日の成果 2012-08-09 | 生活
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