日本へ送った壊れたレコード針の交換が戻ってきた。MCカートリッジというのは針先だけが換えられないので、日本では針交換価格で適当なものが入手できるからだ。そもそもレコードプレーヤーに付いていたオーディオテクニカの製品からその交換でグレードアップし続けて、三回目の針交換となる。
一回目は本社で推薦を受けて他のシリーズからAT33LTDに交換、前回はAT33PTGになり、今回はAT33PTGIIになった。価格も28000円から一万円上がって、38000円になった。流石に考えたが、前回ものの印象が悪くなかったので、落としたくも無いのが心情であり、メーカー戦略に旨く乗っている。そもそも日本では大分昔にこのメーカーのトーンアームやMMカートリッジを使った覚えしかないのである。
自重も同じで前回と同じように取り付ける。若干ケーブルの差込が細くなっている印象だが問題なかった。ただし適正針圧が少し大きくなっているということで、確りと遠心力を調整した。
ネットなどで見ると最初のエージング前は低音が抑えられた感じだということだが、なるほど前回の製品に比較すると明らかに異なる。更に抵抗値なども変わっていて音量も弱めであることも認識できた - よいプリアンプを使っているので全く問題ない。しかし、針をブラシするときの雑音などからして明らかに押さえられた感じの品がよい。
実際に針が壊れる前に鳴らしていたドレスデンで録音された「皇帝ティトー慈悲」を比べると、あれほど張り出していた低音は無くなった反面、遠心力を掛け直したこともあるのか、とても左右のステレオ分離が良くなっていて、レコード盤の雑音もとても抑えられた感じになっている。
弦などの精緻な鳴りは、指揮者ベームの狙ったものであり録音モニター室で聞かれていたものが綺麗に甦っている。エージングの過程は別にしても、低音の鳴り方も、如何にもアナログLPらしい張ったものではなくてとても自然な感じの質を感じるので、どちらかと言えば昨今のハイクオリティーデジタルに近い感じである。
今まで鳴らしたものでは、もともと録音のバランスの悪いものはそれなりに誤魔化し無しに鳴り、良いものはとても判断しやすくなっている。ステレオ定位感も抜群であり、シューベルトの弦楽五重奏曲などもロストロポーヴィッチのチェロ演奏がよく分る。
全体的な抑えられた印象は明らかにクラシック音楽向きの音作りで、前回のタンノイのスピーカーを想起させるような音作りよりは質が高い。そこで、LPの最終期に発売されたデジタル録音LPのベートヴェンの四重奏曲を鳴らしてみる。想像通りとても落ち着いて鳴り、デジタル録音の良さが初めて感じられた。レコードプレーヤー自体が針価格とあまり変わらない程度なので、デジタルメディアほどの細やかさは感じられないが、とても清潔ですっきりした感じが爽快で、恐らくスイスの有名教会の音場が感じられた。
朝晩で時間が無かったので大きな編成の管弦楽はまだ鳴らしていないが、オペラで悪くなかったので判断は低音の支え具合だろうか。トラムペットなどの管の配合の音色も楽しみである。音の立ち上がり感なども優れているので、デジタル的な良さを感じるのだが、さてピアノはどうだろう。
クロード・エルファーの弾くドビュッシーの練習曲を鳴らす。LPの最終的な目標はマスターテープを鳴らすような音とされるが、やはりサー雑音が多いと音像が暈けてしまう。アナログの中域が張った音をして、数寄者は「芯がある」などと表現するが、実際のHIFIとはまた異なる。ポリー二の弾くストラヴィンスキーやプロコフィエフの録音は、なるほどスピード感もあるが、デジタルメディアの精緻さには適わない。
それでも針交換価格を千時間と書かれている寿命で割ると、時間当たり38円も掛かることになる。LP一枚半の演奏価格である。高級ワインを空けてしまうことを考えれば安いのだが、CDが殆ど掛からないことを考えるととても高価な音楽体験である。改めて資料として、ながら試聴のメディアとしてのCDの価値を見直す。
参照:
ストレス開放の収穫 2014-03-29 | ワイン
正夢と幻想の束の間 2008-12-31 | アウトドーア・環境
一回目は本社で推薦を受けて他のシリーズからAT33LTDに交換、前回はAT33PTGになり、今回はAT33PTGIIになった。価格も28000円から一万円上がって、38000円になった。流石に考えたが、前回ものの印象が悪くなかったので、落としたくも無いのが心情であり、メーカー戦略に旨く乗っている。そもそも日本では大分昔にこのメーカーのトーンアームやMMカートリッジを使った覚えしかないのである。
自重も同じで前回と同じように取り付ける。若干ケーブルの差込が細くなっている印象だが問題なかった。ただし適正針圧が少し大きくなっているということで、確りと遠心力を調整した。
ネットなどで見ると最初のエージング前は低音が抑えられた感じだということだが、なるほど前回の製品に比較すると明らかに異なる。更に抵抗値なども変わっていて音量も弱めであることも認識できた - よいプリアンプを使っているので全く問題ない。しかし、針をブラシするときの雑音などからして明らかに押さえられた感じの品がよい。
実際に針が壊れる前に鳴らしていたドレスデンで録音された「皇帝ティトー慈悲」を比べると、あれほど張り出していた低音は無くなった反面、遠心力を掛け直したこともあるのか、とても左右のステレオ分離が良くなっていて、レコード盤の雑音もとても抑えられた感じになっている。
弦などの精緻な鳴りは、指揮者ベームの狙ったものであり録音モニター室で聞かれていたものが綺麗に甦っている。エージングの過程は別にしても、低音の鳴り方も、如何にもアナログLPらしい張ったものではなくてとても自然な感じの質を感じるので、どちらかと言えば昨今のハイクオリティーデジタルに近い感じである。
今まで鳴らしたものでは、もともと録音のバランスの悪いものはそれなりに誤魔化し無しに鳴り、良いものはとても判断しやすくなっている。ステレオ定位感も抜群であり、シューベルトの弦楽五重奏曲などもロストロポーヴィッチのチェロ演奏がよく分る。
全体的な抑えられた印象は明らかにクラシック音楽向きの音作りで、前回のタンノイのスピーカーを想起させるような音作りよりは質が高い。そこで、LPの最終期に発売されたデジタル録音LPのベートヴェンの四重奏曲を鳴らしてみる。想像通りとても落ち着いて鳴り、デジタル録音の良さが初めて感じられた。レコードプレーヤー自体が針価格とあまり変わらない程度なので、デジタルメディアほどの細やかさは感じられないが、とても清潔ですっきりした感じが爽快で、恐らくスイスの有名教会の音場が感じられた。
朝晩で時間が無かったので大きな編成の管弦楽はまだ鳴らしていないが、オペラで悪くなかったので判断は低音の支え具合だろうか。トラムペットなどの管の配合の音色も楽しみである。音の立ち上がり感なども優れているので、デジタル的な良さを感じるのだが、さてピアノはどうだろう。
クロード・エルファーの弾くドビュッシーの練習曲を鳴らす。LPの最終的な目標はマスターテープを鳴らすような音とされるが、やはりサー雑音が多いと音像が暈けてしまう。アナログの中域が張った音をして、数寄者は「芯がある」などと表現するが、実際のHIFIとはまた異なる。ポリー二の弾くストラヴィンスキーやプロコフィエフの録音は、なるほどスピード感もあるが、デジタルメディアの精緻さには適わない。
それでも針交換価格を千時間と書かれている寿命で割ると、時間当たり38円も掛かることになる。LP一枚半の演奏価格である。高級ワインを空けてしまうことを考えれば安いのだが、CDが殆ど掛からないことを考えるととても高価な音楽体験である。改めて資料として、ながら試聴のメディアとしてのCDの価値を見直す。
参照:
ストレス開放の収穫 2014-03-29 | ワイン
正夢と幻想の束の間 2008-12-31 | アウトドーア・環境