Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

ピエール・ブーレーズの家構想

2017-01-14 | 文化一般
エルブフィルハーモニー開館の話題が新聞に載っている。しかしその前日のロマーン・ヘルツォーク元大統領の訃報ほど関心はない。何といっても大統領として最も価値のある発言を数多く残した大統領であり、最も印象に残った眼はヴァイツゼッカー元大統領のそれだったが、言葉においては遥かに知的で深みがあった ― そして死の直前にも最高勲章の授与を辞退して話題になっていた。このように書けばどのような元憲法裁判所の判事だったか分かるだろう。

フィルハーモニーの開館は式典がネットで中継されることは知っていたが直ぐに忘れていた。昨年からのいろいろなプログラムを見ていたがフランクフルトのアルテオパーで聞けないものはNDRの放送管弦楽団とハムブルクの座付き管弦楽団演奏会位でその他は殆んど興行師が同じだった。要するに現支配人は、ベルリンでペトレンコ体制の支配人となるのだが、あまり業界で企画などが出来る人ではないということだろう。

それよりも興味深いのはバーデンバーデンのピエール・ブーレーズ邸が売りに出されているという記事である。同時にその利用の可能性が提議されている。ハムブルクのそれとは違って僅か三億円ほどのことであるから税金を注入しても容易い筈だ。

1958年にその50部屋ある家の二階の間借り人となってから次々と買い足していったということである。550平米あるその家で数々の名作が作曲された。丁度トンネルの反対側のブラームスの夏の短い滞在とは異なる創作の場所である。遺言等はなくとも本人の意思から、ミュージアムやその他の扱いではなくて、フェストシュピールやZKMなどと活きた音楽の館として使っていきたいという案がある。

既に所有のクレーの名画などは相続人11人の中で売却されており、また音楽的な自筆譜などの資料はバーゼルのパウル・ザッハー財団に寄与されていることから、この自宅が大きな相続物件となっている。ブーレーズアカデミーにバーデン・ヴュルテムベルクの援助がされる可能性があり、ベルリンのフィハーモニカ―やSWR音楽部や元管弦楽団員、カールツルーヘのZKM、ドナウエッシンゲン音楽祭のシュペートケーラー未亡人などが名を連ねているが、まだまだハウス維持への協力者を広く求めているということである。既にロシア人から不動産物件への投資の問い合わせが入っているというので急がなければ売却されてしまうというのだ。

バーデンバーデンの祝祭を文化的にも定着させようと思えば何らかの形でブーレーズの家構想に地域社会も協力すべきだろう。ベルリオーズとかリストなどとの公爵時代の関係とブラームスやロシアの文豪の夏の保養地というだけではモーツァルトのザルツブルクとは勝負にならない。ブーレーズから連なる現代音楽の新たな活動拠点として定着すれば若い人々の活動や行き来も増えるに違いない。


写真:赤丸の大きい方から、クアハウス、祝祭劇場、ブーレーズハウス。



参照:
ピエール・ブレーズ追悼記事 2016-01-08 | 文化一般
二十世紀中盤の音響化 2015-02-07 | 音
右の耳が痒いから 2005-04-23 | 歴史・時事
普通の国のまともな大統領 2010-06-02 | 歴史・時事
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