Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

初代改め元祖の方がよさげ

2019-08-01 | マスメディア批評
新聞の音楽祭批評が続く。今度はザルツブルクからでなく、再びバイロイトからの批評である。次に血祭りにあげられたのは?想像通りだが、今度は私と同じような意見の書き手ではなくて他の人である。いよいよヴィーンの国立歌劇場音楽監督就任へと暗雲が漂う。そもそもジョルダン息子がたとえ父親よりは才能が豊かとしても、とてもではないがそのポストに付ける人ではないと確信していたが、誰もが本当の批判を慎重に避けていた。理由は、昨日書いたように大きな新たな市場へとの拡大の先導者になってくれるとの期待がそこにあるからだ。だから間違いなく政治的にも問題のある初代改め元祖バイロイト祝祭劇場音楽監督の方が実力もあり、従来のオペラファンを惹きつけられるにも拘らず、新世代へのその可能性に掛けていたかのように思われる。

そもそも件の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」新制作初日からして、酷いアンサムブルしか引き出せなかったこの指揮者にそれだけの実力が備わっていなかったのは明らかだった。しかし、パリのオペラなどは程度が低いのでどちらでもよいとしてもメトロポリタン歌劇場までが指揮に招聘する販促に加わったことから、益々正しい批評から遠ざかって行った。大体そうしたところが私の見る状況である。決してこの指揮者は政治的な問題がある訳でもなくペテン師でもないので、それなりの成果を期待したいのだが、如何せん実力の世界は厳しい。

つまり、昨年充分に指摘しておけばもう少しは修正してまともな指揮をしたかもしれないのだが、ジャーナリズムが放置したことで、「まるで追われているように、作品を通して、揺らせたり、畳んだり、ガタガタ言わせたりと、前日のティーレマン指揮の管弦楽団に比べるまでも無く全く以ってそれ以上のものではなかった。だから歌手は奈落を注視して歌わなければならず、それどころか初めから出てこない歌手までいた。」と「夜警が歌うところで一向に何も聞こえず、聞こえたのはプロムプターの声だけだった。」と「夜警が自分自身がお勤めせずに寝込んでしまった。」と書かれている。普通はありえないことで、そもそもあの歌は続く三幕でも大変重要な動機となっている。指揮者がまともに楽曲を把握して歌手に稽古をつけていればこのようなことにはならないのではなかろうか。

ミュンヘンでの「アグリピーナ」指揮の関しての見解が別れた。理由は、明らかに聴者のオペラへの興味や聴き方に準拠するという事が知れた。具体的には、歌を聴くか、作品を聴くかとなるのだが、その相違によって判断が変わるというものだ。具体的には改めてとしたいが、実は昨日の記事で、英国とイタリアでのデジタル化に伴うその新たな聴衆層の開拓の状況が異なるとあった。理由は、イタリアのオペラが昔からエンターティメントとしても広く愛されていることに係っている。この丁度対極にあるのがバイロイトのヴァークナー音楽祭で、最早そこでは歌を支える管弦楽ではなく、一体化しているからこそ楽劇と呼ばれるのである。明らかにジョルダンがそうした目的で楽劇を指揮することの矛盾が生じていて、新聞記者が上の様に批判するぐらいなら「ジョルダン指揮の楽劇など聴きに行く方が悪い、知らなかったなどとは言って欲しくない」と責めなければいけない。

BBCからプロムス中継でバイエルンの放送交響楽団ツアー初日を聞いた。もともとは常任指揮者のヤンソンスが指揮して、ザルツブルクへと回る予定だったが、衰弱の為のドクターストップからネゼセガン指揮で行われる。そして二日目にはプロコフィエフの協奏曲をリサ・バティシュヴァリと共演することになっていた。秋のフィラデルフィア管弦楽団日本公演の準備となっていたのが、健康上の理由で下りて、日本公演では昨年共演したばかりのチャイコフスキーの協奏曲へとプログラムが変更になったようだ。

さて初日の演奏は流石にベートーベンの交響曲二番ニ長調が見事で、このサウンドは手兵のフィラデルフィアでも出ない。管弦楽団が合奏の型を持っているようだ。しかし後半のショスタコーヴィッチとなると管弦楽の技量が一回り以上低い。フィラデルフィアの楽団が演奏すると大変な演奏になるが、放送交響楽団では限界が直ぐに表れる。下手ではないが上手に弾けない音形ばかりが出てくる。

流石に客演とは言いながら世界の頂点にいる指揮者がこうしたローカルの放送交響楽団を振ってもその限界まで簡単に突き進むことになる。ネゼセガンの指揮は益々よくなってきているようで来年の復活祭での競演が楽しみになって来た。



参照:
Gestern Nacht Kissenschlacht, Clemens Haustein, FAZ vom 31.7.2019
無視にしか価しないもの 2019-07-29 | マスメディア批評
意地悪ラビと間抜けドイツ人 2017-07-27 | 文化一般
手取足取りのご指導 2019-07-27 | 音
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