Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

上書きされてしまう記録

2023-04-04 | 文化一般
承前)初めての美術館に出かけた。バーデンバーデンに州立施設があったことは知らなかった。むしろ隣のブルダ美術館の方が話題になる。天気が良ければクアーハウスから公園内のいいところを歩いて少しである。

目的は、An Imaginary Audiennceと題する展示に出かけることで、それはSynch03企画に含まれているようだ。つまりアーカイヴ展示とされている。だからそこの一室に玩具部屋の様に集められているのか過去展示のアーカイヴであるようだ。

目的はアーカイヴの再認知であるようで、それらに今どのように対峙して、またそれがアーカイヴ化されていくという構造になっている。ある意味がらくた箱であり、陳腐な展示でもある。

お目当ての展示は坂本教授が参画して為されたシュテファンフォンハウネスの1983年の「テクストトーンズ 」と題されたクラングスクルプテューレンである。音楽畠の用語からすればサウンドインスタレーションとなるのであろう。但し、その創作年度からしても如何にも歴史的という感じがその情景を映したヴィデオからも一目瞭然である。

展示室に置いた管に共鳴する何かを話す人の声がそこで共鳴して、基本周波数のある一定の音量に達するとセンサーが働いて管をハムマーが叩くという仕掛けである。エンドレステープを使っているようで、勿論それを現在実際に作動させるほどの意味を感じさせない。要するにアーカイヴを見てどう感じるかでしかない。

その対面にあったのはアフリカのサバンナのようなところで札をつけたスカートを履いた地元の女性が結婚式にでも出かける様に走り回っているヴィデオが映されている。トレーシー・エミンの„Sometimes the Dress ist Worth More Money than the Money“と題する作品である。これなどは情感に訴えるものがあるので、通常の映画と同じ感じで全く時の流れを感じさせない。反対側には長編のメディチヴィラの為のソナタというものが流れていたが、なんてことはないベンチに座ってセックスチャットで彼女が手淫しているのをチラッと確認して短かな挨拶を送っただけだった。要するにそこにはアーカイヴ効果も何もなかった。

その横のエヴァ・カタトコーヴァのEarNo.4は身体を反射させて、体毛を近接に水の音が流れてとある意味エロティックなのだが、今日のストリーミング事情などを考えると何とも情調的な表現にしか思われない。

この展示会のタイトル通り、ここでそのオーディエンスを意識することになる。そこで記念も兼ねて会場のWiFiで幾つかの写真と映像を発信しておいた。但し自身の記憶や印象として何が残るのか残らないのかはよく分からない。

それでも、アーカイヴ化されるものと、完全に上書きされてアーカイヴ化され得ないものがあるというのはとても実感する。それは何か?おそらくそれがSynch03のテーマだったのだろう。



参照:
「南極」、非日常のその知覚 2016-02-03 | 音
サウンドデザインの仮定 2022-07-01 | 文化一般
コメント
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