デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



パウロ・コエーリョ『アルケミスト』を読了。

分量は少ないので数時間で読めた。
コエーリョの作品は『星の巡礼』以来だったが、相変わらずの高貴な教えをまるでバーナム効果でもって読ませる手法はさすがである。神学論争や禅問答を分かりやすい言葉で展開されている面白みがあると言えばいいか。これは別に悪い意味で言っているのではない。物語の主題は、前半のセイラムの王メルキゼデックが語っている内容であり、彼の話す内容がストーリーが展開するにつれて、言い換えられ肉付けられて別の人物から語られるだけであるから、一貫性があり非常にわかりやすい。
主人公サンチャゴは宝物に至るため前兆にしたがっていくが、一見それらは「神のお導き」というだけのがちがちの運命論で縛られているわけではないし、自分で物事を切り開く力が自分の境遇に負けないことを自ら証明していっているところも少なからずあるのでそこは評価できる。

「世界最大のうそって何ですか?」と、すっかり驚いて、少年は聞いた。
「それはこうじゃ、人は人生のある時点で、自分に起こってくることをコントロールできなくなり、宿命によって人生を支配されてしまうということだ。それが世界最大のうそじゃよ」

 少年は人の「運命」がどういうものかわからなかった。
「おまえがいつもやりとげたいと思ってきたことだよ。誰でも若い時は自分の運命を知っているものなのだ。
 また若い頃は、すべてがはっきりしていて、すべてが可能だ。夢を見ることも、自分の人生に起こってほしいすべてのことにあこがれることも、恐れない。ところが、時がたつうちに、不思議な力が、自分の運命を実現することは不可能だと、彼らに思い込ませ始めるのだ」

「その力は否定的なもののように見えるが、実際は、運命をどのように実現すべきかおまえに示してくれる。そしておまえの魂と意志を準備させる。この地上には一つの偉大な真実があるからだ。つまり、おまえが誰であろうと、何をしていようと、おまえが何かを本当にやりたいと思う時は、その望みは宇宙の魂から生まれたからなのだ。それが地球におけるおまえの使命なのだよ」

作品のスピリチュアルな要素はキリスト教やイスラム教の神に収斂するのだが、少年の運命の実現の過程はある意味『ドン・キホーテ』を思わせる。読み方によっては年甲斐も無く、という感想をもつことも私は理解できるが、自らのものごとへの挑戦という意味では何かを始めるのに年齢は関係ないと捉えることもできるように思うのである。

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