デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



エルサ・モランテ『アルトゥーロの島』読了。

少年期のいわゆる過渡期を描いた小説のなかではかなりよくできている作品だと思ったのが第一印象。(とはいえ、過渡期を扱った小説をどれだけ読んだろう?と振り返ってみると、印象に残る少年キャラは挙げることができても、作品となれば数えるほどしかない(笑)。)

『アルトゥーロの島』の主人公は野生児と言っていいような育ち方をした少年アルトゥーロである。少年は小さい島を出たことがなく島民とほぼ接触せず、母親とは早くに死に別れ、神話のなかの神様みたいな美しい父親は少年にとって英雄的な存在である。島での生活は少年にとって全世界であり、その世界から果敢に飛び出していく父は神であり憧れ以外のなにものでもない。
ある時、父は島に再婚相手を連れてくる。花嫁は少年と歳が二つしか違わない「女性」であった。

といったのが、作品の前半のあらすじである。
身内の人間で尊敬できるのは父親だけ、女というものを嫌悪すべき対象としてきた少年ではあるが、歳が二つ上という継母との関係が、当然、性的なものを意識したくなくとも意識せざるを得なくなって懊悩し、継母が妊娠し出産してから相手にされなくなった少年がどうにかして「自分に注目させたい」と継母に対し滑稽な行動に出る描写は本当にうまい。
少年には成長する自分への戸惑い、父親への幻滅、継母を女性として見てしまうことへの当惑、さまざまなことが起こるのだが、それらを経て、誰かに悪態をついたり恋をしている自分に酔うどこにも持って行きようの無い爆発せんばかりの自身のエネルギーで溺れそうになる彼も、いつしか少しは自分を客観的に、また美しく見えていたものの現実を見えるようになるのである。高校生ぐらいの年齢でこの作品を読むと、ほろ苦い共感を、大人になってもう一度読むときっとよくできた素晴らしい作品であると感じることと思う。

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