このたった1時間ほどの短い芝居が、とても面白い。とても小さな芝居だ。意図的にそのスケールが保たれている。この話なら大作仕立てにすることも充分可能だ。だから、しない。社会派ドラマとしても、近未来SFとしても成立する。だから、しない。鈴江俊郎さんはあくまでも小さな話として立ち上げることで、可能なものとしてこの芝居を構成する。
世界のかたすみに生きる4人の男女。ロンドンのパン工場で働く不法滞在の女 . . . 本文を読む
中村さんの意図したものが、効果的に機能し、方法論とテーマが上手く融合したバランスのいい作品になっている。ラストでバタバタと謎解きがなされるが、芝居はミステリではないから、謎が解けたからといって、ほっとさせられるという類のものではない。
この作品にとって大切なのはお話に仕掛けられた謎が解明されていくことの快感ではなく、その事実を通して、ここに住む人たちの内面に抱えた痛み、実情がより鮮明に我々の胸 . . . 本文を読む