長尾高校以外に見た二作にも少し触れておく。長尾を含めていずれも役者たちが達者で安心して見ていられる。予選を勝ち切って府大会に出場している学校なのだから当然かもしれないが、実に上手い。
冒頭の前説だけで感心させるワンエピソードを成立する精華高校作品は、『椿姫』をベースにしたメインの話(らしいが、僕にはどこが椿姫なのか、わからなかった)に、さまざまな生徒たちによるエピソードを絡めて描く高校生アルアル。
恋愛について教室でセックス(!)をして生徒指導を受ける女生徒と教師の対話が中心になる。生徒指導室で反省文を書かされ、指導を受けるマリー。なんでセックスしたらダメなの、と反論するまさかの展開。
管理的な高校で抑圧される子どもたちを描く。彼らは拘束されて閉じ込められる。だけど必ずしも彼らが間違ったことをしているわけではない。描かれるエピソードはある種のイメージから逸脱しない。だけどそれがどこに行き着くのかは明確にならない。とても上手いとは思うけど、なんだかもどかしい。だけど、そのもどかしさが面白い。表面的な答えはいらない。
大阪女学院作品は単純でわかりやすい。客席からかなりの笑いをとっていた。横並びの食卓は森田芳光の『家族ゲーム』を想起させるけど、その空間がまるで生かされてないのが残念。しかもほとんど座ったままの芝居なのも単調。もっとアクションが欲しい。
正月に家族が集まってテーブルを囲む。祖母が餅を喉に詰まらせて死ぬ。彼女は三途の川の手前で死ぬ直前の最後の時間をもう一度繰り返す権利を得て、やり残したことをすることになるが、という話。
ただそれだけではあまりに単純すぎる。もうちょっとお話に仕掛けが欲しい。バカリズムの『ブラッシュアップライフ』とまでは言わないけど、この程度の話では1時間は持たない。空間の使い方やお話の展開に難がありすぎるのも残念。