今回の高瀬隼子は軽やかな短編集という体裁を取るがもちろんそれだけではない。とりあえずは恋愛小説という定番に挑戦している。だけどこんなえげつない恋愛小説を読んだことがない。表面的にはさらりとしているけど、恋愛の夢なんか粉砕してしまうくらいに強烈だ。だからといって、恋愛を拒否するのではない。非難もしない。それどころかちゃんと恋愛してしっかり結婚したりもする。ただ5つのお話は恋愛の甘さを描かない。シビアな現実を突きつけてくるわけでもない。では何か。
夢見る中学生は両親の離婚、父の浮気をちゃんと受け止めるだけでなく、理解がある。いいじゃないか、と冷静。10年以上もずっと彼女を見守り続ける男は気持ち悪いはずだけど、嬉しい。幼い頃から毎年バレンタインには青いパッケージのチョコレートを贈り続ける幼なじみの女の子。歳の差婚を無意識から嫌悪する心情。不倫相手の結婚を受け入れる女。ここにはさまざまな男女が描かれている。いずれもそんなことでいいのか、と思わされるけど、なるほどね、とも思わせる。何故か納得するのだ。まさにタイトル通り、これからの時代の新しい恋愛がここにはある。