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映画・演劇のレビュー

『二つの季節しかない村』

2024-10-21 16:20:00 | 映画

『昔々、アナトリアで』や『雪の轍』のヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の新作である。だから期待しないわけがない。しかも今回もまた3時間越えの大長編だ。辺境の地にある小学校が舞台になる。

そこで働いている美術教師が主人公。傑作『ブータン 山の学校』を想起させる設定だ。冒頭雪の中を歩いてくる彼の姿を延々と捉えるのもこれから始まる3時間18分だから、あれだってまだ短いくらい。どこまでも続く雪原を歩いていく。『ブータン 山の学校』の冒頭は村に辿り着くまでだけで40分くらいの尺を使っていたけど、さすがにこの映画は走って来た村人の荷馬車に乗せてもらって2.、3分でそのシーンは終わった。

休み明け新学期の始まり。(春休みでも夏休みでもないから、新年の始まりか?)久しぶりに集う先生たちとの交流から生徒たちの待つ教室に。快調な滑り出しだ。

しかし、本編に入ると、なんだか雲行きが怪しくなってくる。まるで映画に乗れないのだ。まさかこんなことになるなんて思いもしなかった。前半部分の事件(生徒へのセクハラ)や親しくなった別の学校の女教師との恋愛というお話の意図が見えない。何を描きたいのか、伝わってこないからイライラする。しかもそのままダラダラと話は綴られる。3時間半である。

彼に屈折した想いを抱く女子生徒の話は後半忘れられるし、親友との三角関係も煮え切らないまま描かれる。圧巻だと評判の彼女の家に招かれて食事をするシーン(チラシには12分に及ぶ激論とある)もなんだか納得しないし、居間の電気を消してくると、撮影現場に続く驚きのシーンの意図も不明。さらにはとってつけたようなラストでの女生徒との対面も、だから何なんだって感じ。

もちろん、この尊大で狭量なつまらない男にはまるで共感できない。アカデミー賞トルコ代表、カンヌ映画祭主演女優賞に輝く映画はまさかの駄作、とまでは思わないけど、これはやはり失敗作だと思う。疲労しか残らない。


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