習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

小路幸也『わたしとトムおじさん』

2009-07-02 22:44:01 | その他
 『東京バンドワゴン』シリーズの小路幸也の新作である。相変わらずのお話で笑ってしまう。ストーリーラインはバンドワゴンと大同小異。ここまでワンパターンさせると、笑うしかないよ。ほんの少し状況を変えただけで、基本はまるで同じだ。

 うまく世の中になじめない人たちが繰り広げる擬似家族ゲーム。だが、ここにくれば温かい風が吹く。それぞれの痛みに直接ふれず、でも、ゆっくりと、癒す。現代とはとても思えないような風景のなか、不思議な磁場を形成する。

 今回は「明治たてもの村」という施設が舞台となる。13歳の帆奈は日本の学校になじめない帰国子女。しかも、ハーフ。日本の学校は普通ではない子には厳しい。大好きなトムおじさん、26歳(彼はハーフではない)は高校時代からひきこもり。うまく人と付合えない。彼はこのたてもの村で建物の修復、修繕をして生活している。

 3章構成で、2人を中心にした小さな事件や旅が描かれる。そして、例によって徐々に仲間が集まる。おじさんも帆奈も少しずつ成長する。なんだかあまりに都合がよすぎて、嘘くさい気もしないではないが、こういうのに、なぜか癒される。現実のように殺伐としないのが、小路さんの小説のよさである。甘いのは承知のうえだ。

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