習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『インスタント沼』

2009-07-03 19:59:13 | 映画
 三木聡は傑作『転々』を撮って、今までの殻を破った、と思ったのだが、今回はその反動か、なんなのかわからないが、以前以上にマニアックで、エスカレートしている。この新作はなんと上演時間が2時間もあるし、便利でお得。相変わらずのへんてこぶりである。

 主人公の麻生久美子は全編出ずっぱりで、大奮闘している。ストーリーはどんどん横滑りしていくし、なんなんだか、よくわからないが、イメージとしては『図鑑に載っていない虫』に近い。ラストのタイトル通りインスタントで沼を作るシーンは、だから、どうなんだ?っと突っ込みを入れたくなるけど、それまでのシーンも突っ込みどころ満載なので、大丈夫。(何が?)三木聡はもうやりたい放題。絶好調。

 松坂慶子がとってもボリュームのある体型(!)になっていて、でも、のほほんとしているところがこの映画にぴったりだ。特殊メイクではないのに、なんだかリアルではない。(ただ、太っているだけなのだが)風間杜夫のたぶん麻生の父だと思われる男も、これが風間杜夫か、と思わずにはいられないくらいの顔のでかさだ。へんてこすぎる。わけのわからない骨董屋を怪演しており、この映画を大きくリードする。

 映画の後半は、彼と絵に描いたようなパンク男、加瀬亮が麻生久美子をサポートする。この3人組の話になり、謎のツタンカーメンの恋占いマシーンを探す。想像を絶するばかばかしさ。それに麻生久美子が次々へんな服やら、かわいい服やら、とっかえひっかえで、目を楽しませてくれる。彼女のファッションショーを見てるだけでも楽しい。

 こういうどうでもよさそうな映画を、何も考えず、ただクスクス笑って見ているのって、かなり幸せだったりする。ふせえりや岩松了も当然出てるし。この脱力系映画のゆるい世界にどっぷり浸かっているのって、悪くない。


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