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窪美澄だけど、これはまだ読んでなかった。今回文庫本になったから読むことにした。読んでいて気分が悪くなる。こんなにも不快にさせられる胸糞悪い小説はない。父親による虐待が描かれる。情け容赦ない暴力に曝される幼い兄と妹、そして母親。誰にも言えない。知られたくない。心を閉ざし生きる。DVを描く小説は多々あるが、これはあまりに生々しく強烈で吐き気がする。第1章の100ページは悪夢だった。
なんとかそこを切り抜けて先を読み進める。そこまでしないと読めないくらいにこれは強烈な小説なのだ。いきなりの展開が続く。婚約者に去られて、キャバクラで出会った女が自殺する。いや、運命の女である梓との出会いからしてあり得ない展開だろう。これは故意にそういうドラマチックな流れを作っている。リアルではなく、まさかの設定。虐待を繰り返す父親を殺そうとした13歳の少年の地獄めぐりと再生までの15年間を空白のまま描く。
2章からは15年後のドラマである。梓との偶然の再会から始まって彼女の抱える傷みと向き合うつつ自分の傷みを共有する。ふたりだから戦える。力を合わせてトラウマに向かっていく。ふたりで彼らの故郷である弘前に行き、過去と向き合う。
読みながらあまりのことで、きつかったから、途中から心穏やかになる本と交互に読むことにした。ということで神戸遥真の『オンライン・フレンド』と同時進行で読んだ。だけど神戸作品もいつもの彼のような甘いだけの作品ではなくかなりシビアで驚く。先にあちらを読み終えた後、最終章に突入する。
一応ハッピーエンドでホッとする。ふたりで幸せになる。いくらなんでも最後まで不幸ではたまらない。