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映画・演劇のレビュー

深津篤史戯曲塾『机上の計算式』

2007-04-05 23:18:16 | 演劇
 リーディング3本、芝居2本の5本の短編集。70分。このくらいの上演時間がとても見やすい。2プロに分けた9本(1本のみが重なる)を一気に上演しても2時間くらいになるはずだが、それをしないという姿勢がいい。長さとしては見れない時間ではない。2時間くらいの芝居はいくらでもある。なのにこの発表会では、そうしない。観客に無理させないで、心地よく見てもらおうという意図であろう。

 内容面でも、軽くもなく、重くもない微妙なラインの作品が多くて、面白く見れた。最初の3本は、ストレート過ぎて、見ていて少し辛いが、悪くはない。だが、もう少し捻りがあってもいい。ワンアイデアなのは、この短さだから、当然だが、そこにどう「何か」を添加できるかが、ポイントだ。残念だが、あまり上手くはいってない。

 芝居として上演された2本は、少し長いこともあり、作品の中に余白が作れた。「1+1=1」では、平田美雪さんが情感たっぷりの芝居をして、それが遣り過ぎ直前でなんとか持ち堪えてる。高校時代と今との落差の中で、ふと一瞬あの頃に戻ってしまう瞬間がいい。

 「センチメンタルな旅」は戦争が起きている中での日常を描く2人芝居。ゴミダメのような部屋を掃除してしまったことで、起こるリアクションと背後を流れる不穏な時代の空気を上手く捉えてある。だが、敢えて戦時下の日常という設定を借りなくても2人の女性の間にある緊張感は描けたと思う。上手くまとめたが、仕掛けに頼らなくても作れたなら、そうするべきだった気がする。戦争は絶対条件ではない。

 深津篤史さんの演出は、素材の良さを生かすために、シンプルにまとめ、作家たち自身の世界を提示することに力点を置く、という当然の作業に徹しており好感が持てる。

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