邂逅史上最大規模のすごいスケールの大作である。その結果、(いつも思うことだけど、)いつも以上に「宝塚」している、ことになる。彼女たちの目指すものが宝塚歌劇団であることは明白で、でも、それはとても大変でおこがましいことで、できない相談だから、そうじゃなくて、自分たちに可能な自分たちの宝塚を目指す。それがこれまでの作品であり、それはそれで成果はあがっている。だからこそ、満を持して挑む。それが今回の作品だったのではないか。彼女たちの本気がしっかり伝わってくる迫真のステージだった。
しかし、それは残念ながら、宝塚を超えない。縮小再生産にしかならないのだ。よく出来た宝塚もどきでは、自分たちも納得しないだろう。そうはならないように、今まで、さまざまな意匠をこらしてきたはずなのだ。
中世のイギリス。薔薇戦争を取り上げたスペクタクルロマン。気合いは入りまくった。それだけにそれが空転していく。まず、ストーリー。単純すぎてつまらない。両家の争い、というお話のベースはそのままでいいけど、もう少しひとりひとりの内面に踏み込んでいかなくては、お話は表層をなぞるだけになってしまい、ドキドキしない。それどころか、だんだん退屈してくる。パターンのお話からはみ出さないし。
人と人の想いがどうぶつかりあい、思いもしないことになっていくのか、そんな予想不可能な姿を描かなくてはお話に入りこめない。壮大なスケールの歴史ロマンを支えるのは、個々人の内面の葛藤だ。それがぶつかり合うことで生じる緊張感、そんなドラマが歴史を動かしていく。その一番大事な部分が完全に欠落している。その結果華やかな舞台とは裏腹に作品は空虚なものとなる。