精力的に公演を続けるエイチエムピー・シアターカンパニーの新作。同時代の海外戯曲を紹介するシリーズの4作目。今回も実に楽しい作品に仕上がった。深刻な問題を扱いながら、しかも、近未来の話で、なんだか難しそうな芝居だな、と見る前(始まる前にパンフを読んでいた時)は思ったのだけど、芝居は予測とはまるで違い、とても軽快でわかりやすく心配は杞憂になる。
2037年のドイツが舞台だ。だから一応はSFなのだけれども、SF的な設定は一切なく、奇を衒うこともなく、描かれ世界は今の時代と基本変わらない。移民を受け入れてそこから生じる問題が背景として描かれるのだが声高にテーマを振りかざさない。楽しく笑いながら見ていられるコメディである。
ヨーロッパの難民問題を扱いながらも、政治的なドラマにはならずあくまでも個人的な問題として提示される。主人公たちの日常のスケッチである。彼らの生活が描かれる。背景となる問題はもちろん軽いものではない。葬儀の場を舞台にしてそこに集う人たちが旧交を温めるだけではなく、ほんのちょっとしたことからぶつかり合い、生じるドラマが軽快なタッチで綴られていく。配信で見たのだが、ストーリーに引き込まれ、劇場で見ることと変わらないくらいの気分で違和感もなく見終えることができた。描かれる問題は僕たちが今向き合う問題である。他人ごとではなく、遠くのお話でもなく、今の問題として受け止める。いろんなことを考えさせられる刺激的な作品だった。