
小説だと思って読み始めたら、エッセイ集だった。(というか、本を開いたら、そんなことすぐにわかる)でも、このタイトルの小説をぜひ、読んでみたかった。そこにはどんな秘密が描かれてあるのだろうか。夢のような世界が広がるのか。それとも、悪夢か。
図書館が大好きだ。旅行に行くと、いつもその土地の図書館を巡ることになる。別にそれが目的なんかではないけど、ついつい図書館を見かけると、ふらふら入ってしまう。本を借りることが目的ではない。というか、その土地の人間ではないから、借りられない。でも、そこにはそこにしかない魅力がある。それを受け止めることが目的なのだ。図書館には本への愛があるからだ。それは、辻村さんもここに書いている。
昨年の夏、台湾の高雄市にある高雄市中央図書館に行って、遊んだ。このブログのどこかにも書いたけど、あそこは最高の図書館だ。一生に一度は行けばいい。(僕は何度でも行きたい。もう2度行った)7階全部が図書館で、屋上まで楽しめる(さすがに屋上には本はないけど)ありとあらゆる本が網羅されている。利用者の便宜を最優先して、である。4方がガラス張りの各階には、自由にお茶を飲みながらゆったりと勉強が出来る広大な学習(自習)スペースが用意されてある。僕はあそこでなら1日過ごせれる。同じように、花蓮の図書館も楽しかった。こちらは、駅の隣の公園のなかにある小さな図書館である。夜の地下自習室で勉強している人たちが素敵だった。
練馬区の図書館もよかった。娘の暮らす光が丘の図書館だ。休日にはたくさんの市民がここに来て本と暮らす。枚挙の暇もない。
図書館の思い出なんか書いていると、それだけで、何時間でも書ける。クアラルンプールの贅沢な図書館では昼寝をした。もちろん、一番好きなのは自分の学校の図書館だ。1年だけ、ここの図書館長もした。楽しかった。(幸せなので、ずっと、していてもいいのだけれど、僕の本来の仕事はクラス担任をすることなので、1年で辞めた)
辻村さんの身辺雑記なのだが、このエッセイ集が楽しい。ミーハーの、どこにでもいる女の子の気持ちがしっかり伝わってくる。もちろん、彼女は有名な直木賞作家で、今の日本を代表する小説家である。でも、その前に子供のお母さんであり、主婦であり、ひとりの女の子なのだ。そんな彼女の日常がこの雑多な文章からは垣間見れる。
僕は小説家にはなれなかったけど、この本を読んでいると、作家になるって、こんな感じなんだな、と実感できる。才能のある彼女とそんなものない自分を同じように捉えるのは不遜だけど、でも、それくらいに彼女の等身大は僕たちのそれと似ている。