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映画・演劇のレビュー

楽市楽座『はだかの王様』

2013-09-03 22:29:06 | 演劇
 アンデルセンの有名な童話を基にして楽市のテイストで再構成した作品。笑いあり、歌ありでとても楽しい1時間半だった。3年振りで楽市の芝居を見た。萌ちゃんが大きくなっていて驚く。育ち盛りだから当然のことなのだが、なんだかうれしい。彼女はキリコさんと対等に芝居をしている。しかも、まるで遜色ない。

 家族3人で、旅周りをして野外劇を日本中のあらゆるところで上演する。そんな嘘のような夢のようなことを楽市楽座は4年間繰り広げている。困難は始まる前からわかっていたはずだし、それでもきっと想像を絶する困難に何度も直面しているはずだ。でも、それを乗り切り今の彼らがある。そんなことは、この芝居1本を見ただけでも十分に想像できる。

 シンプルで、ちゃんとつぼを押さえてあり、見やすいし、楽しい。たった3人ですべてを見せる。でも、まるで無理がない。それは台本がよく出来ているからだ。海の底を舞台にしてタコの王様と2人の仕立屋(でも、詐欺師)のやり取りを中心にして構成したドラマは、作品世界を広げすぎることなく、でも、自然体。見ていてとても心地の良いスケールに収まる。当然お話は「王様は裸だ!」と看破するまでなのだが、そこが祝祭空間になるのも楽市らしくていい。誰かを糾弾するのではなく、すべてを受け止める。良いとか悪いとか、もちろんなくはないけど、そういうものを突き抜けた先へとドラマを到達する。それは、これが「子供向け」だから、なんていうわけではない。だいたいそんなこと作り手は一切思っていないし。

 劇場は、いつもの円形劇場だ。そこに水の上に浮かべた舞台。野外で、天井のない空間だから、芝居中も、空が見えて開放感がある。雨でもやるから、すごいことにもなる。今回もよりによってクライマックスで嵐のような雨になる。でも、それが心地よくもある。もう濡れても大丈夫。舞台の3人はまるで気にもせず、堂々と芝居を続けるのだから。

 投げ銭も楽しい。「ここが投げ銭タイム!」と誘導してくれるのも、ビギナーにはいい。だんだんタイミングがわかってくるから、そのうち自分から、投げることが出来るようになる。折り紙に小銭をたくさん包んで舞台に投げると、まるで自分もこの芝居に参加している気分になるのが不思議だ。舞台と客席の一体感が心地よい。長山現さんが目指す芝居が明瞭になってきた。来年もぜひ見たい。


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