劇団ポプラ『火垂るの墓』

　実は避けておこうと思ったのだが、せっかくこういう機会があり、見せてもらったのだから、少しメモ程度に書き残しておく。

　僕は学校での団体鑑賞による演劇には否定的だ。たぶん子供の頃見せられた芝居がつまらなさ過ぎて、それから芝居嫌いになってしまったからだろう。芝居＝つまらないという図式を体に叩き込まれた。それってなんだか、と思わないか。それは僕だけのことではなく、きっとたくさんの人たちが感じてることではないか。だれもが面白い芝居なんてない。だが、団体観賞用の芝居ってどうしてこんなにもつまらいのだろう。まぁ、理由は多々考えられるが今は書かない。

　教員になって視聴覚行事の責任者になった時、一度、自分の思うことをやってみようと努力したことがある。小劇場の魅力的な芝居を生徒に見せることを目標にした。だが、それはなかなか難しかった。生徒のニーズと、先生方の考え、使用するホールの問題、興味のない生徒を相手にすること。さまざまな難問をクリアしても、８００人もの欲求を満たすことはできない。

　最初、南河内万歳一座にお願いしたのだが、断られた。本当は新感線が一番いい、と思ったのだが、それも駄目で、けっこう困った。結局、太陽族が快く引き受けてくれたのだが、あの時はけっこうドキドキさせられた。予算の問題や、彼等が今まで学校団体での公演をしてなかったこと、作品の選定と、それが１５歳から１８歳の子供たちにどれだけアピールするのかという不安。子供に媚びたようなものを提示されるのは、困るが彼らに伝わらないようでは話にならない。初演はウイング・フィールドで上演した作品（『憩いの果実』）を青少年会館大ホールに持ってきてどうなるか、それも怖かった。だが、岩崎さんたちは見事に成功してくれた。ほんとうにほっとした。だが、作品からはＷＦでのあの感動は伝わらなかった。公演自体はよかったけど、あんなに気持ちがしんどかったことはない。

　その後、パノラマ☆アワーとか、何度か小劇場の劇団にもお願いしたこともあるが、直接、自分が関わることはなかった。僕にとって芝居や映画は仕事ではない、と改めて思った。

　さて、今回の芝居である。ニュージカルで『火垂るの墓』を見せるだなんて無謀だ、と思った。現代のシーンから始まり、戦時下の神戸へ。幼い少女と少年がたった２人でサバイバルする。ドロップが踊りだす場面が生徒たちに受けていたが、やはり話には無理がありすぎた。反戦なんてわかりきったことを描くのに、この題材はいらない。これでなくてはならないというものが提示できないのならばそこには意味はない。

　だいたいアニーメーションとなったジブリ作品『火垂るの墓』のあの暗いイメージを払拭することはできない。もう何十年も経つのに、今でもトラウマになりそうな勢いで記憶に残っている。あれは高畑勲監督の傑作である。だが、もう一度見たいとは思わない。同時上映された『となりのトトロ』はもう１０回以上見てるのに、『火垂るの墓』はあの時一度見ただけである。

　神戸の空襲で焼け出された人たちを描くのではなく、幼い兄妹の姿を追いかける小さなお話が、ミュージカルとして成立するとは思わなかったが、なんとかギリギリで成立した。その事実は認める。ラストの阪神大震災のシーンからルミナリエのシーンまで、確かに同じ神戸が舞台ではあるが、この作品の描くべきものからはずれてしまった気がしないでもない。見やすい芝居にはなっている。だが、それが十分条件ではない。