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映画・演劇のレビュー

戌井昭人『ぴんぞろ』

2011-10-31 22:37:11 | その他
 こういう何もない話をぐだぐだ書いて1本の小説にするって、なんだか詐欺みたいだ。だけど、それを飽きることなくラストまで見せる(読ませる)のだから、これはこれで才能なのだろう。ぱフォーマンス集団「鉄割アルバトロスロケット」という劇団(だと、思う)で作、演出をしている(らしい)戌井昭人の長編(というか、中編くらい)いかにも、芝居やってる人っぽい小説。前田司郎なんかに似ている。

 売れない脚本家がイカサマ賭博に巻き込まれて、なぜか流れ流れてひなびた温泉のストリップ小屋で働くことになるという話。なぜか、まだ若い(こんなとこで燻る場合は、いつも中年とか、おばば)ストリッパーのリッちゃん(22歳)と、そのおばあちゃんである三味線弾きのルリさんと3人で出張お座敷ストリップショーをする。彼は売れない芸人(イカサマ賭博で殺させた)の変わりにここにきて、司会をやらされているのだ。ほんの少しのはずが、秋から年末まで、ここで過ごすこととなる。その間の毎日がだらだら描かれる。ほんとうにあきれるくらいに何もない。なのに癖になる。何もないことはわかっているのに先が気になり、侘びしい気分に包まれて最後まで一瞬で読んでしまう。こういうのも面白いというのだろうか。

 今週はなぜか、薄い本ばかりで、1日1冊ペースで読んでいたのだが、週末になると、本の読み過ぎでゲー吐きそうになった。往復で7割くらい読めるから、しかたなく残りを寝る前に読む。そのパターンになったからだ。読書と、映画と芝居は体によくない。(ついでに、仕事のやり過ぎや、仕事の延長なのだが、クラブのしすぎも健康を損なう)

 久保寺健彦『GF ガールファイト』のように気持ちはわからないではないが、力足らずの小説を読むと、がっかりする。この手の初めての作家が続くと、自分の選択眼に自信をなくす。

 川上未映子のエッセイ集『ぜんぶの後に残るもの』は週刊誌連載を集めたもので、リアルタイムで3・11について自分の想いを綴った部分が刺激的だった。その直前に読んだ坂本龍一編『今だから読みたい本 3・11後の日本』と並べて、まさに今だからこそ、読むべき本だと思った。






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