
いちばん見たかった映画だ。2月に劇場公開された。DVDは6月にレンタルされた。すぐにでも見たかったけど、待つことにした。最近は2部作ばやりの映画界で、この作品もまた2部作仕立である。だが、ほかの作品とは少し違う。お話を引き延ばして興行を考えた作品ではない。2部作としてでなくては、成立しない作品なのだ。もともと、これは4部作である。ちゃんと4本は独立した作品として作られてある。しかし、上映形態を考慮して2部作仕様にしたのだ。劇場では2本立として、連続上映された。(DVDも同じようにしてある)
四季を描く。四季を通して1年間のドラマだ。前回の「春・秋」編に続いて、今回は「冬・春」で完結する。できるだけ、期間をおいてみることが好ましい。できたなら、4回に分けて1時間ずつを見たほうがいいのかもしれない。でも、1時間では物足りないな。このスタイルがいちばんいい。劇場公開時には見られなかったから、冬が近づくまで待った。4カ月待ち、秋が深まったので、よくやく解禁にした。そういうこだわりがこの作品には大事だ、と思う。
東北の小さな村での1年間のお話だ。一度はここを出て、都会で暮らした。しかし、無理だった。もう一度、生まれ帰るため、ここに戻ってきた。彼女がひとりで自分が暮らしてきた村に帰って暮らす1年間を丁寧に描く。夏から春まで。食を通して、農業を通して、生きることを見つめなおす。自給自足を楽しむ。困難は承知だ。でも、ここには楽しみしか描かれない。だが、それはただのきれいごとではない。しんどいことなんか、描かなくても十分に伝わる。その結果の楽しいことを食べるという行為を通して描くのだ。だから、これはただのグルメ映画ではない。
荒れ地に手をかけ、畑を耕し、米を作り、花や野菜を育てる。自給自足の生活は、生きる実感を取り戻す術だ。手の掛かる料理を時間をたっぷりかけて作り、味わう。自然と向き合い、生きる。子供のころ、当たり前にしてきたことを、改めてひとりで、(以前は母と共にしてきた)やってみることで、見えてくるもの。その小さな発見のひとつひとつを映像として見せてくれる。
ワンエピソードは7つほどの料理を通して描かれる。だから、ひとつは7、8分程度の上映時間になる。でも、その時間は短くもないし、長くもない。とても適当である。そこにはドラマがある場合もあるし、ない場合もある。彼女ひとりのエピソードも、誰かとのエピソードもある。母との思い出が挟まれる場合もある。さまざまだ。いずれも、料理を通して、生き方や考えが見えてくる。もちろん、とてもおいしそうで、目に楽しい。きっと食べたなら、もっとしあわせになれるのだろう。
彼女が食を通して、見たものが、これからの生き方の方向を決める。ラスト10分。彼女がいきなり不在となる部分がすばらしい。母と同じように、いきなりいなくなり、いつも一緒にいてた幼なじみのふたりは、しょんぼりする姿が描かれる。もちろん、そこはそのあとのエピローグへのブリッジだ。
5年後。しっかりこの地に居を定めた彼女の生き生きした姿を描くラストシークエンス。幸せに包まれる。
人は何のために生まれてきて、何のために生きているのか。そんな大切なことを教えてくれる。これはとびきり贅沢な映画なのだ。見てよかったと心から思う。