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映画・演劇のレビュー

『莫逆家族 バクギャク・ファミーリア』

2012-09-12 22:17:53 | 映画
 40前のおっさんたちが、気付くと、今もなんだか昔と同じようにバカをしている。とことんエスカレートしていく、もう引き返すことなんて不可能になる。そんな暴走するおやじたちのお話だ。

 そんな気はなかったはず、だった。もうヤンキーは卒業して、今ではちゃんと仕事を持ち、家族もいる普通の社会人、のはずだった。だが、そんな大人としての生活が楽しいか、と聞かれると、そんなわけないじゃん、と答えるしかない。でも、それが生きることだし、いつまでもガキみたいにバカやってられない。だが、今の暮らしに未来はない。ただなんとなく生きてるだけ。子供がぐれてしまい、親の言うことは聞かない。でも、そんなの自分の子供の頃も同じだったはず。というか、自分たちはもっとワルだったし、めちゃくちゃしていた。

 やがて、10代の頃、と「今」とが交錯する。しかも、だんだん同じようなことになる。すると、あの頃のように死者がでる。当然のなりゆきだ。しかも、あの頃と違ってもう取戻しがきかない。(もちろん、あの頃だって、死者が出たらおしまいだが)凄惨な暴力シーンのオンパレードで、目を覆いたくなる。でも、スクリーンから目が話せない。強烈な印象を与える。バカは死んでも直らない。破滅に至るドラマはある種の予定調和だ。あの頃みんな家族だった。それは今も変わらない。おれたちは運命共同体だ。死ぬまで仲間だ。そんなガキっぽい想いを今も心に抱いている。だから、ダチの娘が暴行されたと知ったら、みんなで復讐に行く。

 映画はそんな彼らをかっこよく描くのではない。反対だ。よくもここまで無様に描くものだと、あきれる。ここにあるのは、ヒロイズムではない。虫けらのようにしか生きれない敗者の姿だ。熊切監督はそんな彼らを肯定も否定もしない。客観的にみつめるばかりだ。もどかしいほどだ。だが、この惨めな姿をとことん見せることで、そこに、確かな真実が見えてくる。それでも生きなくてはならない。どんなにかっこわるくても、それが人としての定めなのだ。ここにいて、こんなふうに生きるのだ。自分は自分でしかない。その事実とちゃんと向き合う。そんなすがすがしささえそこからは立ち上がってくる。




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