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映画・演劇のレビュー

北京蝶々『都道府県パズル』

2012-09-12 22:33:22 | 演劇
 発想はおもしろいと思うのだ。しかも、道州制を導入することで生じる様々な問題を、大上段から描くのではなく、道州制実施のためのイベントの実行委員会を通してみせるのもいい。共同でおでん大会をする、とかなんだかかなりどうでもいいようなことで、政治レベルでのお話ではなく、町内会の寄り合いのように始まる。なんだか、彼ら各州の代表のはずなのに、そうではなく、なんとなく仕方なく選ばれたような人たちで、しかも代表としてみんなの意見をここで語るのではなく、個人的な話に終始する。どうでもいいようなぐたぐた話がだらだらと続くことになる。

 これをおもしろく見せることは、出来る。だが、この作品は、まるでテンポが悪く、これではわざと退屈に見せようとしているようにさえ見える。メリハリをつけて、笑わせる、そしていろんなことを考えさせる、そんな定石を踏まないのだ。淡々としたタッチで、わざわざ全国から集まったのに、退屈な会議をただやり過ごすためだけに過ごす。もちろんやがて、深刻な問題にも突き当たる。だが、本題に入る手前で芝居はいきなり収束してしまう。なんだか肩すかしを食った気分だ。

 もう少し突き抜ける何かが欲しかった。ねらいはわかるのだが、仕掛けがなさ過ぎるから、本当にただ退屈なだけのものになる。それでは芝居にする意味はない。それぞれのキャラが立つようなエピソードを羅列しながらいつのまにか、彼らとともにそこにいて、この退屈のその先を見つめることになるべきだった。あと30分欲しい。

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