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金子修介監督の久々の新作。こんな映画を彼が作るなんて驚きだ。香港との合作らしいが、凄い映画である。情け容赦ない。『黄金少年』と漢字でタイトルが出る。
冒頭の岡田将生による殺人シーンは昔見た2時間ドラマ(土曜ワイド劇場! ワイドなのに最初の頃は90分だった)みたいで呆れたけど、13歳の子どもたちの犯罪になったところから凄いことになる。彼らがたまたま撮影した動画を通して岡田を強請るのだが、この両者の駆け引きがスリリングで一体この先どうなのか、ハラハラする。これは単純な犯罪映画ではない。
岡田と対峙する少年の悪意は冷酷な殺人鬼である岡田を上回る。最初はおとなしい巻き込まれ型の存在にみせて、やがてまさかの存在になる。彼の中にある悪意は何なんだろうか。3人組になる子どもたちの関係性、岡田将生の存在。両者が共に行う少年の父親殺し。彼の中にある父と義母への想い。さらには彼を女手ひとつで育てる母(少なく出番で圧巻の黒木華)との微妙な距離。彼の置かれた家庭環境が今のモンスターである彼を作った、なんていう単純な話ではない。この主人公の少年を羽村仁成が演じる。岡田将生を凌ぐ恐怖の存在。彼には心がないのか。冷酷な犯罪者でありイノセンス。
ラストまで息を抜くことはできない。この恐るべき子どもと向き合う江口洋介演じる刑事のアップで映画は幕を閉じるが、これで終わりではない。この先まだまだある、そんな怖さが彼の表情にはある。金子修介渾身の傑作。