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映画・演劇のレビュー

劇団冬の甲子園『MAGIC』

2020-01-15 21:01:59 | 演劇


作り手は、まず観客に面白いお話を見せたいのだな、ということは伝わってくるのだけど、
その見せ方や描き方がちょっと拙いから、乗り切れない。どんなに嘘くさい話でも勢いに乗せて冗談のように飛ばしてくれたなら、笑いながら見ていられるのだけど、それもない。

クライマックスに向けて緊張感を持続できないし、見せ場となるはずの、6時間生放送を乗り切れるのか、という部分もまるでサスペンスを感じさせないまま終わるのには拍子抜けする。マジックに関しては素人の売れない俳優が、稀代のマジシャンの身代わりとして舞台を務めることが出来るのか、というのはかなりハードルが高い挑戦のはずなのに、引き受けたら簡単にできるような展開で、彼がその仕事を引き受けるか否かという部分がお話の焦点になるのは解せない。代役をこなすための条件が全く提示されないまま、ストーリーは進んでいくから、「それはないわ」と想うしかない。この冗談のような話を成立させるだけの仕掛けがなくては納得がいかない。説得力ゼロのお話では、見ていて、つらいばかりだ。

お話自体の説得力も大事だが、それだけではない。失踪したマジシャンが何を思い消えたのか、元子役として一世を風靡した売れない役者が今何を思うのか。そんな彼らの気持ちをちゃんと描かなくては、このお話は観客の胸には入らない。作、演出の飯也ナオキは、このお話にどんな「MAGIC」を仕掛けようとしたのか。一番大事なことはまず、そこに尽きる。

 


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