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映画・演劇のレビュー

TEAM GEKIYAKU『 初期実験〈first experment〉』

2019-12-31 18:30:39 | 演劇

「毎日が実験だ」というキャッチフレーズが気持ちいいし、初々しい。そういう作り手側の姿勢がちゃんと芝居に反映されている。一人芝居で、ある男の内面の葛藤をいくつもの視点からみつめていく。現実と虚構のはざまで行き来する、短いシーンの積み重ねで、気負いなく、とても自然な心情を表現しようとした。決して頭でっかちで観念的なもの、というわけではない。ただストーリーを追っていくわけではなく、その瞬間瞬間の感情を点描していくので、わかりづらい芝居になったことは否めない。でも、自分たちのやりたいことを純粋に追い求めようとする姿勢はしっかり伝わってくるので悪くはない。

1時間ほどの芝居は、一人語りである。ある小説家の内面のスケッチみたいなのだが、どこか、とっかかりとなる部分が明確であれば観客は彼に感情移入しやすかったはずなのだが、それがないから、少し引き気味に見てしまうのが残念だ。彼と一緒に彼の心の中を旅していくような作品になっていればよかったのだが、そこまではいかない。

作者たち(作、演出は赤星鮭治と鷲見肇)が、がっちりと主人公(吉川幸宏)と向き合い、その葛藤が見ている人たちにちゃんと伝わってきたなら、きっと感動的な作品になったはずだ。なんだか少し残念だ。(それにしても、演出がふたりで役者がひとり、なんていう位置関係はめずらしい)


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