習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『監督ばんざい!』

2008-02-08 23:21:34 | 映画
 北野武監督第13作。このタイトルとあのポスターを見た時から、全く見る気を失くしてしまったのだが、それでも「世界のキタノ」映画なので、一応DVDで見ることにした。(おまけでカンヌ用の短編『素晴らしき休日』も付いていて、なんだかお徳な気もしたので)

 それにしてもここまで自分を揶揄するような映画をよくも平気で作れるものだ、と思う。自虐的というのとは、ちょっと違う。そんな卑屈さなんて微塵も感じられない。無邪気というのもちょっと違う気がする。これはとても不思議な感触だ。天下の北野武でしか作れない映画なのだが、彼のわがままを許しこの企画を遂行した映画会社(と言っても自分の会社だが)の英断は、彼が独裁者だから、というのではなく彼なら何かするのではないか、なんていう期待も込めたのだろうか。出来てきたバカ映画は予想通りであったのか、否か?よくわからない。

 このビートたけしによる北野武監督に対する皮肉を込めたライト・コメディーは、もしかしたら究極のプライベート・フィルムと言えまいか。彼は先に『TAKESIS’』で「役者ビートたけしに対する映画」を作っている。今回は「監督北野武に対する映画」らしい。(特典インタビューでそんなことを話していた)そういう解釈ってなかなか面白いとは思うが「だからどうした?」とも思う。

 作品としては、正直言って納得いかない出来だ。『みんなやってるかい』よりはましだが、この軽さについていけない。つまらない映画というわけではない。ビートたけしらしい映画だと思う。だが、北野武らしさはない。虚構でしかない「北野武」を笑い飛ばすのではなく、北野の看板を背負いその中で彼の世界をいかに客観的に対象化するか、そこから何が生まれてくるのか、そんなものが見たかった。彼が本気でこの問題に取り組んだなら何が生まれてくるのか。そちらの方が気になる。

 これは「世界のキタノ」を笑い飛ばし、彼の名声にドロを塗るような映画である。そして、それを敢えてやれるのは、彼だからだ。それって確かに凄いと思う。バカバカしいことを平気でやり遂げた。そのまま最後まで見せてしまう。照れたりしない。確かに凄い。

 だが、そんな作品にいかほどの意味があるのやら、僕には分からない。

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 豊島ミホ『神田川デイズ』 | トップ | 『アメリカン・ギャングスター』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。