
自分に対して自信を持てない19歳の女性が主人公。彼女は未熟児として生まれてきた。両親は経済的な理由から彼女を保育器に入れることを拒否して、育てた。発育不全のまま、なんとか成長し、でも、心と体に障害がある。耳がちゃんとは聞こえない。雑音が混じる。だから人とちゃんと話せない。ある日父親は出て行ったまま帰らない。そして、19歳になった。
訪問介護の仕事に就くが、当然上手くは出来ない。そんな彼女がひとりの老人と出会う。介護の仕事を通して出会った。先生と呼ばれるその老人は、彼女を優しく包み込む。彼の息子は、額装の仕事をしている。彼女は乞われるままその仕事を手伝うことになる。
静かで、優しい。穏やかに時間が流れる。少しずつ、彼女の心がほぐれていく。この世界で、誰ともつながることのできる他者なんていなかったのに、ここにきて、自分が必要とされていると実感出来た瞬間の幸福。ゆっくりと馴染んでいく。慌てる必要なんかない。19年間誰からも顧みられなかったし、そんなことを淋しいと思うこともなかった。自分は必要のない人間だから、と思っていた。自分の居場所を見つけて、初めて恐怖を感じる。もし、この場所がなくなったなら、どうしようという不安だ。そんなこと、感じたことがない。だから、怖い。でも、今はただ静かにここに来て働く。時間はあっという間に過ぎていく。
中学校の同級生だった(らしい)隼は、(彼女は覚えていないから)先生の孫だ。今はこの家を出ているけど、時々やってくる。彼は彼女のことを、すごい、と言う。彼女には何が凄いのか、よくわからない。孤独な2人は恋に陥る、というよくあるようなパターンにはならない。彼らはお互いをリスペクトする。きちんと距離をとって、ゆっくりと時間を共にする。もどかしいくらいに、2人の距離は縮まらない。時間ならいくらでもある。19年も何もなく過ごしたのだ。慌てることはない。
生きていてもいいのだ。そんな当然のことを、噛みしめる。自信は、まだ、ない。でも、徐々に変われるはずだ。今はまだこんなだけど、大丈夫、たぶん。もちろん、無理して変わろうとする必要もない。やがて、先生は死ぬだろう。先生のボケはどんどん進行している。いつまでもこのままであるはずもない。だが、行方知れずだった父が帰ってきて、今も家にいるように、状況は少しずつ変わる。そんな現実とも向き合い、やがて、もうすぐ彼女も20歳になる。
訪問介護の仕事に就くが、当然上手くは出来ない。そんな彼女がひとりの老人と出会う。介護の仕事を通して出会った。先生と呼ばれるその老人は、彼女を優しく包み込む。彼の息子は、額装の仕事をしている。彼女は乞われるままその仕事を手伝うことになる。
静かで、優しい。穏やかに時間が流れる。少しずつ、彼女の心がほぐれていく。この世界で、誰ともつながることのできる他者なんていなかったのに、ここにきて、自分が必要とされていると実感出来た瞬間の幸福。ゆっくりと馴染んでいく。慌てる必要なんかない。19年間誰からも顧みられなかったし、そんなことを淋しいと思うこともなかった。自分は必要のない人間だから、と思っていた。自分の居場所を見つけて、初めて恐怖を感じる。もし、この場所がなくなったなら、どうしようという不安だ。そんなこと、感じたことがない。だから、怖い。でも、今はただ静かにここに来て働く。時間はあっという間に過ぎていく。
中学校の同級生だった(らしい)隼は、(彼女は覚えていないから)先生の孫だ。今はこの家を出ているけど、時々やってくる。彼は彼女のことを、すごい、と言う。彼女には何が凄いのか、よくわからない。孤独な2人は恋に陥る、というよくあるようなパターンにはならない。彼らはお互いをリスペクトする。きちんと距離をとって、ゆっくりと時間を共にする。もどかしいくらいに、2人の距離は縮まらない。時間ならいくらでもある。19年も何もなく過ごしたのだ。慌てることはない。
生きていてもいいのだ。そんな当然のことを、噛みしめる。自信は、まだ、ない。でも、徐々に変われるはずだ。今はまだこんなだけど、大丈夫、たぶん。もちろん、無理して変わろうとする必要もない。やがて、先生は死ぬだろう。先生のボケはどんどん進行している。いつまでもこのままであるはずもない。だが、行方知れずだった父が帰ってきて、今も家にいるように、状況は少しずつ変わる。そんな現実とも向き合い、やがて、もうすぐ彼女も20歳になる。