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これもあり得ないようなお話のインド映画だ。だけど、これはボリウッド映画ではなく、外国資本の入ったアート映画のスタイルを取る。だから、歌やダンスはないし、上映時間はなんと90分ほどの短さ。カラフルな色遣いも楽しい。
ムンバイからパリへ。そこからなんと世界へと、クローゼットと一緒に連れ去られていく冒険が冗談のようなタッチで語られていく。そこで体験する不思議な出来事の数々を、よくあるファンタジーではなく、結構リアルなタッチで綴っていく。でも、それはなんとも言いようのないタッチで、ほのぼのとして楽しい。映画はこのタイトルそのままの内容。インド映画ならではのえげつなさはない。おしゃれでさらりとしている。
冗談のようなこのお話を、これから少年院に入れられる子どもたちに語る彼は、今は教師をしている。このお話を通して彼は何を伝えたかったのか。非行少年たちの現実と、彼の語る夢のようなお話の狭間にあるのが、何なのか。単純に、このお話を通して子どもたちに夢を届けるのではない。だけど、学ぶことを通して、今ある現実を変えることは出来る。奇想天外な旅をするために、現実の向こう側に行くために、何が必要なのかを学ぶこと。先生である彼は少年たちに夢見る力を語る。この映画はありえないことがあり得ることが人生だ、ということを教えてくれる。