確か前回は見逃したので、久々の『Bar あの夜』だ。相変わらずで、ゆる~りとした時間がそこには流れている。2話からなる。途中の幕間ライブを挟んで110分。舞台上ではお酒を飲みながら、あの夜の一歩手前にあるBarで女たちが同窓会(?)を繰り広げる。
今回は巴御前たちによるおしゃべりと、お登勢たちによるおしゃべり。いつの時代でも、女たちは強い。歴史の影に隠れて、しっかりと男たちを支えた気丈な女たちによる愚痴だとか、惚気だとか、どうでもいいようなグダグダ話。今回は東京オリンピックをネタにして、たわいもない雑談がとりとめもなく続く。ワンエピソード40分ほどの中編と短編の間くらいの長さが心地よい。
特別何があるというわけではない。登場する女たちのことをあまり知らなくても構わないだろう。彼女たちの生きた時代が重ならなくてもいい。要するになんでもありなのだ。気心の知れた仲間が集まり、生きていたときのことを思いだし、お酒を片手に雑談をするだけ。おいしそうに彼女たちが飲むのも、見ていて楽しい。こんな、どうでもいいようなお話を毎回繰り広げるのが、なんだか楽しいって、不思議だ。
真紅組の本公演の壮大なドラマとは対極にある番外公演。だけど、根っこは同じ。そこに生きる人々への共感。ほんのちょっとしたささやかなやりとりが、なんだか気持ちいい。幕間のライブも楽しい。僕が見た回はジュディ八田&セルジオ樋上による歌謡ショー。2曲で終わりだなんて残念。もっと彼女の歌を聴きたいと思わせる。そんなところもいい。これはお芝居というよりも、いろんなことがほどよいバランスで成り立っているライブショーなのだ。まるでアドリブのように展開する。そんな軽さが身上だ。