18歳の選択、13年後の後悔。ふたつの時代を通して、どんな大人になるのか、が問われる。映画としては実にシンプルだ。ミュージシャンになるという夢を抱いて東京に出て行く青年と、彼を見送り故郷に止まる少女。13年の歳月を経ての再会。手垢の付いたパターンなのだけど『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない、』『心が叫びたがっているんだ。』のチームは丁寧にふたりの再会から始まるドラマを追いかける。
でも、主人公はそのふたりではない。31歳になった姉を慕う18歳の妹だ。あの頃のお姉ちゃんと同じ年になった彼女がふたりを引き合わせる。そこに介入してくるのが18だったあの時の彼だ。お話はこの4人を中心にして展開していく。4人と言いながら、ふたりは同一人物だから、3人なんだけれど。
ラストのファンタジーのような展開(というか、最初から13年前の彼がやってくる、というところから十分ファンタジーなのだけれど)があまりに甘すぎて、乗り切れないけど、それ以外は実にリアルで、前作同様アニメではなく実写ですればいいような映画だ。(そう言えば、前2作はどちらも実写化されている。)なぜ、アニメなのか、よくわからないところが永井龍雪監督の持ち味で、秩父を舞台にするのも、彼なりの拘りなのだろうけど、そこも必ずしも、そこでなくてはならないわけではない。必然性ではない。個人的な拘りだ。アニメーションで何が出来るか、ではなく、アニメで何をするか、が大事なのだろう。彼らの武器はアニメで、これで自分の表現する世界を大事にしている。
たわいないお話を丁寧に描くことで、誰もが感じる「あの日」のことを追体験させてくれる。18の頃、夢見た未来。18歳の彼の想いが現実に彼を存在させ、今を生きる彼の後押しをする、というこれもまた定番ストーリーなのだけど、そのとんでもなく臭い設定を許してしまうことが可能なのは、これがアニメだからだろう。おばさんになってしまった彼女(でも素敵なおばさん、と言われる)が、自分のしてきたことを、この13年間生きたことを、何一つ悔やまない姿を通して、卑屈になっていた彼が心を開く。
新しい発見は何ひとつない映画である。すべてが予定調和だし、でも、それだからこそ、これはこれでいいんだ、と言える。