久々に心震える映画と出会えた。何の期待もせずに見た映画なのに、しかも、最初はこれはなんなんだ、と思いながら見たのに、その世界観に嵌まってしまい、ありえないような展開にあれよあれよと思う間に、どっぷりとこの映画に浸っている。ある夫婦のお話からスタートして、とんでもない不幸が彼を襲い、それに耐えられなくて、自殺する、なんていう暗いお話(もうありえない!)が始まるのだ。そこで、まず、おしまいになるのだけど、映画はまだ、30分も経ってないから主人公の2人が死んでも終わらない。
彼らの娘のお話になる。でも、彼女にも、とんでもない不幸の連続が降りかかる。なんですか、この映画は、と思う。不幸話か、というと、そうじゃないんだけど。そこから別の家族の話になる。アメリカからスペインへと舞台が移る。そこでのある男女のお話。え?これはオムニバス? そうではありません。偶然の出会いと別れの繰り返し。二組の家族の物語が交錯する。そして、それぞれの子どもたちが出逢い恋に陥る。そこです、ポイントは!
でも、ふたりが出逢うまでのそれぞれの家族の歴史を描こうというのではない。もちろん、それはそれでちゃんと描かれるのだけど。彼らが結婚して,子どもが生まれる。その子がこの膨大な物語の書き手で,彼女が自分の生まれるまでの出来事を祖父母の代に遡り、描くのである。出会いと別れ再会が、ひとつになり、小さな幸せにつながる。ほんのちょっとした偶然がすべてを奪うこともある。すれちがいもある。幸福の先には考えられないような不幸が待ち受けている。一瞬の悲劇がすべてを奪う。でも、生きていく。とてもテンポよくホラ話のような偶然がつながる。5章仕立てで、最初の第1章は「ヒーロー」と題される。じゃぁ、誰がヒーローなのか、と考えるよね。答えはもちろん映画の中にある。そうだったのか、と思う。胸が熱くなる。