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映画・演劇のレビュー

ブルーシャトルプロデュース『松陰狂詩曲』

2024-12-16 21:09:00 | 演劇

昨年の『織田信長』を見逃している(悔しい!)から久しぶりのブルーシャトルプロデュースである。先日見た劇団ひまわりでの公演に続く大塚雅史、作・演出作品。これはエンタメ作品だけど、何度となく取り上げてきた幕末期を生きる若者たちの群像劇は青春ドラマとしても楽しめる。

彼らが不安な時代を全力で生きていく姿はいつも感動的だ。これは偉人伝ではない。名もない若者たちの戦いの物語。吉田松陰を演じた松田岳が素晴らしい。今回もいつもつ同じで群像劇だが、その中心にいる松陰を彼はコミカルに演じ、塾生たちを導く。これはアクションではなく、学問の喜びを描く。学び舎を舞台にしたある種の「学園もの」である。大塚さんのランニングシアターダッシュ時代(先生と生徒たちが一緒になってラグビーボールを追いかけていた『ぼくの先生』とか、ね)を思わせる。松陰の指導者として上から目線で教えるというのではなく、一緒に学ぼうというスタンスは教育者の姿勢としても共感できる。それは先生と生徒という関係の理想的な姿だ。まだ若い青年である松陰は先生というよりも先輩に近い存在である。キャッチコピーにもなっている松陰の「諸君、狂いたまえ」という言葉が胸に響く。リーダーとして塾生を導く松陰とBSPのリーダー松田岳が重なる。彼らは純粋にその姿に憧れる。お話の前半は安政の大獄までが描かれる。彼らの無念が胸を打つ。
 
後半は松陰の死後。師を失った塾生たちのそれぞれの戦いが描かれる。前半のほのぼのとしたタッチから一転して悲壮感漂う剣劇アクションになる。刀を使った激しい立ち回りが続く。彼らの戦いを死者である松陰は見守るしかない。やがて死者になった彼らのもとに松陰がやって来る。
 
今までメンバーは男性だけで(歌舞伎よろしく女性役も男だったが)演じてきたが、今回女性ふたりが参戦しているのも新鮮。

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