実を言うと、これはあまり見る気がしなかった。だけど、芝居と芝居の間の空白時間、たまたまこれがぴったりあったから半分時間潰しとして見ることにした。
なんだか君が悪い映画だな、と思い見ることを避けていたけど、やはり予想通りの作品だった。とても不快だ。グロテスクというわけではないけどこんな嫌な映画をよく作ったものだ。ここには一切説明はない。主人公のミア・ワシコウスカ演じる栄養学教師ノヴァクが、ではなく、この映画の監督であるジェシカ・ハウスナー(脚本も彼女)も、また説明はしない。
押し付けがましくないけど、ノヴァに引き込まれていく子どもたち。洗脳される生徒たちは全く疑うことなく彼女を信じ受け入れる。そして確かに理想は実現する。食べることなく、生きていくこと。そんな夢のような世界を実現するために彼らは食べないことを選ぶ。クラブゼロの会員になり、夢の世界に導かれる。この崩壊寸前のこの世界から離れて先生と一緒に向こう側で幸せに暮らす。
彼らは一体何処に行ったのだろうか。消えてしまった先を明確に提示することはない。4人はノヴァクと共に絵の中に消える。
現実ではない。あり得ないことだ。精神力で食事せずに飢えることなく、生きるなんて不可能。だけどそれを実現する。だけどファンタジー映画ではない。食べたものを吐き出して出てきたゲロを食べるグロテスクなシーンがある。リアルだ。それは食べろというから食べるけど、こんなものをあなたたちは食べているのだ、という抗議でもある。エグい。
だけど、やはりこれは清潔感漂う映画ではある。なのに、なんとも不自然。熱くならないけど、頑固に曲げない。不思議な映画である。