額賀さんによる青春ミステリ作品。彼女がこのタイプの作品を取り上げるのは初めてではないか。だけどこれは事件の謎解きではない。
あくまでいつも通りの青春ドラマ。ほんのちょっとした符合からタイミングが合って起こる事故。殺すつもりではなかった。だけど殺してしまう。プチンと糸が切れるように凶行に至る。一応は殺人事件の謎解きだけど、トリックとかはない。あるのは偶然の悲劇と後悔。発想は悪くはない。
だけど、作品自体はあまりよくない。お話にはかなり無理があるからだ。こんなに上手く二度も事故(殺人だけど)は起こらない(はず)。都合がよすぎて嘘くさい。最初は高校の卒業記念のピアノ演奏会。4年後、今度は大学の卒業記念演奏会。ふたつの演奏会で起きた殺人。
事件を追う雑誌記者。事件と関わる4人の音大生。それぞれの視点からあの殺人の顛末が語られる。一応主人公になる記者のドラマをもう少し掘り下げるといい。彼が取材する4人とのバランスがよくない。さらには最初の殺人の犯人との関係が実はお話の根底にあるけど、そこも弱いからすべてが中途半端になってしまった。