シリーズ第3弾になる。(僕がこのシリーズを読むのは初めてだけど)描かれるものは喫茶ドードーにやって来て心休める人たちの姿だ。彼女たちはここで一休みして再び大変な毎日に立ち向かう。ここにくれば美味しいコーヒーや不思議なデザート(食事も)がある。あなたの悩みに効くメニューに励まされ、戦場(職場だけど)に戻る。働くことが生きること。仕事は楽しいけど困難なことだらけ。いつも倒れそうになり傷だらけ。
たった5席しかない小さな喫茶店。お一人様専用。そこにはそろりさんがいる。そしてドードー(店内に飾られているイラスト)も。今回はコロナ禍明けの帰って来たはずの日常が背景になる。だけどそこはもう以前の日常ではない。そんな困難極まる日々と戦う女たちの姿が描かれる。短編連作スタイルで5人の女性たちが描かれるけど、これを描くスタイルは変わっている。ほぼ同時進行で5人のエピソードが語られるから、最初は戸惑ってしまうのだ。5人の短いエピソードで次の話へと移行していくからだ。普通なら1話完結でひとりずつ順番に語られるだろうが、これはそうはしない。とはいえ一応はその回の主役設定はあるし、睦子さん(この店の常連)は別格に扱い。
結果的に5話からなるお話はちゃんとした長編小説になっている。そんなとても上手い作りに感心した。そしてもちろんのことだが、これを読みながら元気をもらうことになる。これは、そんな素敵な小さな作品である。